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症例紹介

蓄膿症と月経痛

【症例5】 18歳、 女性
身長154センチ、体重45キロ。痩せ型。

症例キーワード: 月経蓄膿

主訴

蓄膿症と月経痛。
 蓄膿症:小学校三年の頃から。必ず片方がつまっている。鼻流白濁~清希。頭痛はないが鼻塞がひどくなるとイライラして集中力がなくなる。終日、通年性。病院の抗生物質と消炎剤を以前は飲んでいたが結局根治には至らず今は飲んでいない。
 月経痛:高校に入って以来起こるようになる。痛みは月経開始1~2日目、下腹部及び腰のつれるような鈍痛で、さほどひどいものではないがすぐ鎮痛剤を飲んでしまう。月経周期20日、経期5日間。経血の色調・量はたぶん普通位という。血塊なし。白帯下多し。母親も年来の月経痛があったが、これは当帰芍薬散で非常に調子よく、ならばと娘にもこれを飲ませたが無効だったと言う。
母親曰く、できれば両方同時に治してほしいが無理ならば、今のところ経痛は鎮痛剤で押さえることができているので、蓄膿症から治してほしい、と。

全身症状
寒熱 上下肢冷え性で冬は靴下で寝る。
二便 大便1日1行
小便1日7~8行、清長。
飲食 食事の量は少ない。
全身 午前中はだるく、また疲れるとしきりにあくびが出る
浮腫 下肢はむくみやすい。
夏は多汗の傾向にある。
顔色は青白い。
舌質淡・胖・嫩。舌苔なし。

経過・結果

第1診

食不振・全身倦怠・四肢冷及び舌診から気虚(及び陽虚)が基本に存在するものと考えられる。蓄膿症は一般に、黄濁涕の分泌を主とするものであるが、今回の場合は白濁~清希の鼻涕である。白濁~清希の鼻涕の場合、痰濁あるいは脾気虚由来のものが多く、これを基本症状と合わせて考えると気虚による蓄膿症と考えてよと思う。一方の経痛は実のところ攣急性の鈍痛・四肢冷・尿頻数・下肢浮腫・白帯下等から当帰芍薬散でいけるのではと考えていたのだが母親の件で一蹴され、他に思いつく処方もない。そこでとりあえず母親の言葉に甘え蓄膿症に的を絞り治療を進めることとする。気虚による蓄膿症を治すべく 

処方1)補中益気湯を14日分投与(2/17)。

補中益気湯
黄耆(蜜炙)4.0、人参(白参)4.0、白朮(清炒)4.0、当帰(酒洗)2.0、陳皮2.0、大棗2.0、甘草(蜜炙)1.5、柴胡(三島)2.0、乾生姜1.0、升麻1.0

第2診

3/5 少し良いような気もするがはっきりわからない。

処方1)を14日分投与。

第3診

3/20 鼻はだいぶ通るようになってきた。鼻涕の量は同じ。今回漢方薬を飲み始めてから始めて月経を迎えたが全く経痛がなくびっくりしている。

処方1)を28日分投与。

第4診

4/29 鼻づまりはないがやはり鼻流白濁涕は同じ。今回も経痛なし。月経周期が26日に伸びた。

処方1)を28日分投与。

第5診

6/3 鼻の症状は同じ。経痛なし。また月経周期が28日となる。

処方2)補中益気湯合苓桂朮甘湯を14日分投与。

補中益気湯合苓桂朮甘湯
黄耆(蜜炙)4.0、人参(白参)4.0、白朮(清炒)4.0、当帰(酒洗)2.0、陳皮2.0、大棗2.0、甘草(蜜炙)1.5、柴胡(三島)2.0、乾生姜1.0、升麻1.0、桂皮(ベトナム)4.0、茯苓(朝鮮)6.0

第6診

6/20 鼻づまりなし。鼻流清涕もほとんどなし。

処方2)を28日分投与。

第7診

7/29 蓄膿症及び月経痛いずれもほぼ治癒。漸減の後廃薬。

考察

 後回しにするつもりだった経痛のほうが蓄膿症より先に治ってしまうという少々マヌケな医案である。結局、この患者の経痛は気虚によるものであったと考えられる。今思えば月経周期が20日は早すぎる。気虚により28日間固摂できなかったものとおもわれる。補中益気湯内においては、おそらく当帰と人参・黄耆の補気薬群との薬対が効果を発揮したのであろう。逆に人参・黄耆を含まない当帰芍薬散では気虚型の経痛には効果が上がらなくても仕方がない。私自身、補中益気湯で経痛に効果を上げたのは初めての経験であった。途中、苓桂朮甘湯を合したのは鼻涕を除くための配合である。

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