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症例紹介

心労時、精神緊張による動悸

【症例13】 49歳、 女性
身長154cm、体重50㎏。

症例キーワード: 不安動悸緊張

主訴

 およそ1年前から。ちょうどその頃とても心労がたまっていた。精神緊張時に好発するが、それ以外に発作的に起ることも多い。心悸発作はおよそ10分ほど続く。発作後は全身倦怠となんともいえない不安感覚が残り、家事が出来なくなり、字も書けなくなる。病院の検査では心臓に器質異常は確認されない。
<病歴>
 子宮筋腫があり(3年前確認)、経血が出血過多にある。このため鉄欠乏性貧血(血色素8g/㎗)がある。爪もスプーン状に反り返っている。恐らくこの貧血が心悸の原因のひとつであろうと病院は説明している。子宮筋腫は閉経期なのでしばらく様子を見ることにし、積極的な治療は行わない。鉄剤が投与されている。

全身症状
寒熱 上肢・下肢ともに冷える。また全身的に非常に寒がりである。
二便 大便1日1行。
小便1日7~8行、色・量ともに平。
飲食 食欲・飲水ともに平。
全身 普段から疲れやすい。
胸腹 水分を散りすぎた時、チャポチャポとみぞおちで音がする。また、たまに嘈雑あり。
浮腫 なし
頭暈なし
月経 周期(28日)、経期(7日間)、経痛(初日に少し)、経血(鮮紅色、量多)、血塊なし。
面色萎黄、眼周囲黯黒。
皮膚 あかぎれ・あざが出来やすい、右下肢静脈瘤あり。
血圧 110~70㎜Hg

経過・結果

第1診

 構造的に考えると、初めに子宮筋腫・出血過多があり、これに伴い貧血症状が現われ、さらには貧血のため心悸が起きたもと考えられる。心悸には精神的刺激も大きく影響していると思われる。子宮筋腫は血瘀、貧血様症状は気血両虚、心悸は心気不寧によるものと思われる。治療順序としては先急後緩の原則にのっとり、心悸を最優先治療目標にする。安心寧神・補心定悸を行うべく、

処方1)苓桂朮甘湯加牡蠣・香附子を14日分投与。

苓桂朮甘湯加牡蠣・香附子
茯苓(朝鮮)6.0、白朮(清炒)3.0、桂皮(ベトナム)4.0、甘草(炙)2.0、牡蠣(煅)3.0、香附子(酢制)3.0。

第2診

 処方1を服用後、一度も心悸発作は出ていない。精神的にも安定している。朝の起床が楽になった気がする、という。そこで処方1)を継続服用し、都合約3ヶ月服用した後、エキス散の苓桂朮甘湯に変更。その後、本格的に貧血の治療を病院で行い、合わせて苓桂朮甘湯をそちらで出してもらうとの事で当薬局での治療は中止となる。

考察

 貧血に続発する心悸には苓桂朮甘湯の加味方である定悸飲(茯苓、白朮、桂皮、甘草、牡蠣、李根皮、呉茱萸)が第一選択肢であろう。今回の場合、心悸と同時に精神神経症状が強く出ていたので苓桂朮甘湯加牡蠣・香附子とした。苓桂朮甘湯加牡蠣・香附子は『漢方処方の臨床応用2』を参考にした。
心悸が起ると発作後の不安感情・落ち着かない感覚、眠りが浅い・夜中にはっと目覚める、驚き易い、といった精神神経症状を起こすことが多いものである。心気が不安定になって起る現象と考えられる。このような場合、上記の苓桂朮甘湯加牡蠣・香附子や苓桂朮甘湯合柴胡桂枝乾姜湯を好んで用いている。

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    <服用中の薬>
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