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症例紹介

頻発月経

不妊、流産癖

【症例16】 48歳、 女性
身長165cm、体重57キロ。大柄な感じ。

症例キーワード: 月経

主訴

 半年ほど前から月経がほぼ毎月2回あり、これに続発した強い全身倦怠と脳貧血(血色素は確認していない)。これらの症状を何とかしてほしい。

全身症状
寒熱 上肢・下肢ともに非常に冷える。冷えのぼせあり。
二便 大便1日1行(月経前になると便秘の傾向)
小便1日8行、色量ともに平。
飲食 食欲・飲水ともに平。
全身 非常に疲れやすい。血圧112~69㎜Hg、脈拍56/分、体温35.9℃、献血不能
胸腹 時々みぞおちが痛む。
月経 周期(もともとは28日だったが、現在15~6日で来る)、経期(7日間)、経痛(1~2日目、下腹⇒腰、鎮痛剤使用)、経血(色・量ともに平)、血塊(直径約5㎜×5個)、器質的婦人病歴はない。
萎黄
舌質微紅、舌苔微白
皮膚 あざが出来やすい

経過・結果

第1診

 とかく閉経前後は何かと月経にまつわるトラブルが出やすいようである。経痛・血塊・冷えのぼせ・あざが出来やすい、などから血瘀による頻発月経と判断した。上肢・下肢の強い冷え、低体温などから虚寒を帯びていることが確認できる。また、強い倦怠感・血圧が低め・脈が遅め、などから気虚も併発しているものと考えられる(献血不能・脳貧血から、恐らくは頻発月経に続発する鉄欠乏性貧血があり、この貧血が気虚・虚寒に影響しているものと考えられる)。活血化瘀、温経散寒、補益中気を行うべく、

処方1)芎帰調血飲第一加減合補中益気湯を14日分投与した。

芎帰調血飲第一加減合補中益気湯
桂皮(ベトナム)1.0、茯苓(朝鮮)3.0、芍薬(酒炙)3.0、桃仁3.0、牡丹皮2.0、当帰(酒洗)2.0、川芎(酒炙)2.0、白朮(清炒)4.0、地黄(乾)2.0、乾生姜2.0、甘草(炙)1.0、烏薬(塩炙)2.0、香附子(酢制)2.0、枳実2.0、陳皮2.0、木香2.0、大棗3.0、延胡索(酢炙)2.0、紅花2.0、牛膝2.0、益母草2.0、黄耆(蜜炙)4.0、人参(紅参)4.0、柴胡(三島)3.0、升麻1.0。

第2診

 服用初日が月経開始2日目であった。二日間服用した段階で出血が止まった。なんとなく体も温まり全身の調子もよいとの事でこのまま服用を続ける。処方1)を14日服用後、都合により煎じ薬から処方2)OTC芎帰調血飲第一加減合OTC補中益気湯(いずれも錠剤)に変更。翌月には月経出血は一回だけであった。そのまま処方2)を継続し、その後も月経は30日前後の周期で起り、全身倦怠四肢冷・も軽くなってきている。処方2)を4ヵ月服用後の血液検査では血色素10g(正常値12~16g)。7ヵ月服用後の血色素11g。血色素の基準値に未だ満たないが体調はすこぶる良好との事。健康維持と更年期に備えて現在も処方2)の量を減じて服用中。

考察

頻発月経は概ね血瘀型、血熱型、気虚型とがある。今回の症例では気虚型と血瘀型との混合型と考えられる。芎帰調血飲第一加減は駆瘀血剤の中でも、とりわけ虚寒症状のある場合、つまり「冷えた血瘀」のある場合に好んで用いている。また、補中益気湯と合方する機会が多い。
また鉄欠乏性貧血の治療は基本的に鉄が必要であるが、今回の場合、貧血が陳旧性のものでなく、頻発月経に続発するものであるから、これが治ればおって回復してくるものと考え使わないこととした。結果、処方1)のみで頻発月経がなくなり、鉄剤を使わずに血色素を向上することが出来た。服用前の血色素が確認できていなかったことが残念である。
因みに、漢方においても貧血(当時は黄胖病と言った)の治療には鉄剤を用いる。『万病回春』に棗子緑礬丸として記載があり、わが国においては『竹中家方函』茵荊湯、『叢桂亭医事小言』鍼砂湯が有名である。

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