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症例紹介

左腰~左下肢の神経痛

【症例104】 79歳、 女性
身長152cm、体重65㎏。小太り。

症例キーワード: 神経痛腰痛

主訴

腰(左)~左下肢の神経痛。
 H29.3.7、左足をひきずって来局。発症はH27.11月ごろから発症。きっかけは不明。自発痛があり、立っても座っても、横になっても痛む。夜はソファーで体幹を斜めにして休んでいる。痛みはジンジンとして、午前5時~11時ごろ、および寒冷時・陰天時に悪化傾向あり。逆に入浴後は軽減する。病院にて牛車腎気丸を3ヵ月服用しているが、どれくらい効いているかよくわからない。慢性関節リウマチは手指の痛みに出ているが、下記病院薬にてある程度コントロールできている。
<病歴>
慢性関節リウマチ(7年ほど前から)。
胆石にて胆嚢摘出手術(20年前)。
<服用薬>
カンデサルタン錠(降圧薬)
バクトラミン配合錠(抗菌)
アマルエット配合錠(高血脂)
エクア錠(糖尿)
サラゾスルファピリジン腸溶錠(抗リウマチ)
レバミピド錠(胃薬)
メチコバール錠
ウルソデオキシコール酸錠
プロレナール錠(血管拡張、抗凝固)
リウマトレックスカプセル
フォリアミン錠(葉酸)
ランソプラゾール錠(抗潰瘍)
リカルボン錠(骨粗鬆症)

全身症状
寒熱 悪風(+)、四肢冷(++)
二便 大便1回/日
小便3~4行/日(夜間5行)。日中の量は少ない。
飲食 食欲(平)
飲水(平)
全身 疲れやすい
浮腫 両下腿部にあり
睡眠 熟眠障害あり
夏は顔面より多汗。
胃腸 胃腸症状なし
月経 器質病変歴なし
黄色
舌質胖大、舌苔白。

経過・結果

【第1診】

悪風・浮腫状の皮膚、尿不利から麻黄体質が、更に四肢冷(++)、79歳という高齢、陰天・寒冷時に悪化、入浴後に好転などから虚寒が顕著にありと判断。

そこで、麻黄類方中、虚寒に対応できる麻黄附子細辛湯を基本に用いることにする。麻黄附子細辛湯を神経痛に用いる際は桂枝湯を合わせることでより効果が上がることを経験しているので今回もそれに倣うことにする。

処方1麻黄附子細辛湯(エキス散)3.0/4.5g+桂枝湯(エキス散)4.0/6.0g 分2×7日分

【第2診】

 全く効果なし。そこで、胆嚢手術歴に着目する。自家経験則であるが、胆嚢に現在病変のある者、あるいは過去にあった者の身体片側痛に四逆散及び四逆散加味方にて効果を収めることを多く経験している。そこで、処方1)の桂枝湯を四逆散に変更して用いることにする。

処方2麻黄附子細辛湯(エキス散)3.0/4.5g+四逆散(エキス散)4.0/6.0g 分2×7日分

【第3診】

7日分服用後、神経痛ほぼ消失。布団で眠れるようになって嬉しい。

処方2 do. ×14日分

【第4診】

痛み良好。足を引きずらずに歩けるようになった。

処方2 do. ×14日分

【第5診】

 良好を維持。そこで服用量を1/2とし、14日分を28日かけて服用してみる。

処方2do. ×14日分

【第6診~】

 1/2量でも良好を維持。状況を見て廃薬。

 

考察

まず、麻黄附子細辛湯について。麻黄体質で高齢者・虚寒のものの痛症に好んで用いている。『傷寒論』の「少陰の病たる、脈微細、但だ寐んと欲す」を高齢者・虚寒のものにあてはめた。片頭痛・三叉神経痛・肩痛・肋間神経痛・帯状疱疹及び後神経痛、脳卒中後遺症、坐骨神経痛といった身体片側性疼痛に合桂枝湯あるいは合芍薬甘草湯あるいは合四逆散として用いている。麻黄附子細辛湯が片側性疼痛に有効な理由として細辛が関与しているのではないだろうか。麻黄附子細辛湯のほか大黄附子湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、独活寄生湯など細辛配合剤は神経痛に多用されている。神経痛は原則、片側性に痛む。
四逆散と胆嚢病変について。例えば胆石症の発作疝痛に四逆散(合芍薬甘草湯)が奏功する。私のなかでは大柴胡湯(合芍薬甘草湯)と双璧である。面白いことに、いろいろとやってゆく中で、胆石を持っている者の身体片側性疼痛(上記のほかに心痛、腹痛、下腹痛)にも四逆散並びにその加味方が有効なことがある。片頭痛・三叉神経痛・心痛・肩痛に血府逐瘀湯、肋間神経痛・腹痛・下腹痛に柴胡疏肝湯といったぐあい。更に胆石症のみならず、胆嚢炎・胆道ジスキネジー、急性膵炎の罹患歴のあるもの諸症状にも有効である。また胆嚢摘出後の症状にも本案のごとく対応可能で、また痛みは左右を問わない。
胆嚢病変は身体左右にひずみを生じ、それが片側性疼痛となり、これに四逆散が効くと考えれば一応説明はつくがどうであろうか。



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