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症例紹介

下腿部の慢性湿疹

【症例121】 42歳、 女性
身長162cm、体重55㎏。

症例キーワード: 湿疹皮膚

主訴

左右の下腿部に散在する楕円形(最大5cm×3cm)、円形(直径1~3cm)の湿疹。湿疹は赤色局面を形成し、表面は湿潤している。痒みが強く掻き崩すこともあり、現在は痂疲を形成している。発症はH30.2月ごろ。きっかけは不明。
近頃は上腕・手首の伸側に、左右対称に5mmほどの赤色湿疹も出始めた。これもまた非常に痒い。
病院の薬を使用しているが一向に良くならないどころか、秋ごろから拡大しているような気がする。
H30.12月来局
<使用薬>
アンテベート軟膏(ステロイド)
ベポタスチン(内服、抗ヒスタミン剤)

全身症状
寒熱 冷え性(−)
二便 大便:1~2日/回
小便:1日5~6行
飲食 食欲:平
飲水:平
全身 疲倦乏力(−)、容易感冒(咽痛⇒鼻水⇒咳、毎年2~3回)、AG(−)
浮腫 なし
睡眠 良好
心神 良好
ノドかぜをひきやすい
頭痛(−)
胃腸 良好
月経 周期(30日)、経痛(−)、経血(暗紅)、血塊(−)、器質病変(−)
皮膚 皮膚表面は暗黄色で一年を通して乾燥してガサガサした感じ。特に冬はひどい。肉付きは引き締まった感じで浮腫はない。

経過・結果

【第1診】

下腿前面の楕円形・円形の掻痒性の湿潤性紅色湿疹は「貨幣状湿疹」と考えられる。上腕・手首の掻痒の強い小発赤は掻き崩すしたことによる続発性の反応、すなわち「自家感作性皮膚炎」の散布疹であろう。治療の基本は原発巣、すなわち下腿部の貨幣状湿疹の治療で、これが収まれば散布疹も消失するものと思われる。

体表部(風)の湿潤性・掻痒性の紅色湿疹(湿熱)から風湿熱の侵襲と考え消風散を投与。

処方1)消風散3.0/9.0g 分2 7日分

【第2診】

服用5日後に来局。服用後、皮膚炎が悪化。左右の膝裏面、手甲部、首筋に鮮紅色局面を形成。ひりひりと痛痒い。誤治と判断。急ぎ薬疹を取り除くべく越婢加朮湯を投与。

処方2)越婢加朮湯4.5/9.0g 分2 5日分

【第3診】

薬疹は5日分の服用でほぼ消失。皮膚症状からのアプローチでうまくいかないのであれば全身症状からのアプローチに戦略を変更。暗黄色の皮膚・ノドかぜをひきやすいこと・慢性化していることなどから柴胡体質があるのではと考え十味敗毒湯を用いることにする。

処方3十味敗毒湯1.0/6.0g+越婢加朮湯3.0/9.0g 分2 7日分

【第4.5診】

下腿部の貨幣状湿疹は退色・乾燥して痒みも激減。散布疹も消失。

処方3 do. 14日分×2回

【第6.7診~】

下腿部の貨幣状湿疹は褐色の色素沈着を残すだけとなり、湿疹の隆起もほとんない。痒みもない。以後、漸減ののち廃薬。

処方3 do. 14日分~

 

考察

いろいろと考えさせられる医案である。
治療方針について
まず、漢方の治療の基本方針として「随病治療」と「随証治療」とがある。前者は病名に応じて漢方薬を選択する方法、後者はその時々の症状に応じて選択する方法である。いずれも有効な方法論である。本案にあてはめると、例えば随病治療では『山本巌の臨床漢方・下P1405』に「貨幣状湿疹・自家感作性皮膚病…基本処方:消風散合越婢加朮湯、自家感作性皮膚炎で膿疱を形成した場合+十味敗毒湯合黄連解毒湯」とある。また、随症治療では上述の通り、主として中医学的方法論であるが、風湿熱による皮膚炎と考え消風散ということになる。ただ、本案に照らし合わせると、「随体質療法」という考え方も必要なのではないだろうか。「随体質療法」とは、いったん皮膚症状とは切り離して、体全体を俯瞰して体質をとらえ、そこから改めて皮膚病を考えるという発想方法である。皮膚症状そのものから導かれた処方(ここでは消風散)と、体質から導かれた処方(ここでは十味敗毒湯)とが一致すれば問題ないが、矛盾する場合、随体質的判断が有効なときもあるのではないだろうか。

使用量について
本案では十味敗毒湯の使用量は1g/日である。通常処方の1/6である。つまり、このことから十味敗毒湯は用量依存的(直接的作用)に効果を発揮するのではなく生体機能(免疫-内分泌-自律神経など)に作用し、これが皮膚炎に作用すると考察しているが、どうであろう。

十味敗毒湯について
★主な使用目標
➀オデキ(体質を問わず)
➁脂漏性湿疹
③反復性の化膿性皮膚炎(化膿ニキビ、尋常性毛瘡、汗腺膿瘍、伝染性膿痂疹、掌蹠膿疱症、膿疱性乾癬、麦粒腫、眼瞼縁炎、肛門周囲炎、肛門周囲膿瘍)
④平素から様々な化膿性炎症を起こしやすく、皮膚は乾燥傾向で、顔面は時に油肌で、冬季悪化傾向のもの、の様々な皮膚炎。

★十味敗毒湯と消風散の体質的鑑別(慢性病への応用)
      十味敗毒湯   消風散
悪化時期:  冬       夏
化膿体質:  〇       ×
アレルギー体質:  △       〇
柴胡体質:  〇       ×
脂漏体質:  〇       ×
皮膚浮腫:  ×       〇
皮膚乾燥:  〇       ×
滲出液:   △       〇
【参考文献】
『山本巌の臨床漢方』メディカルユーコン
『北川宗正 漢方講座 講義録Ⅱ』 コタロー薬専事業部

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