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症例紹介

糖尿病性腎症

【症例122】 71歳、 男性
身長173cm、体重70㎏。がっちりした体形。

症例キーワード: 腎臓病

主訴

糖尿病性腎症。
糖尿病は十数年前に発症。発症当初は経口糖尿病薬を服用していたが、奥さんの強い協力により食事療法を徹底し、現在は服用していない。現在HbA1cは7.0%前後で経過。糖尿病の合併症は両下肢のしびれと糖尿病性腎症。数値は以下の通り。
2018 7/8
HbA1c(4.6~6.2):7.1
eGFR:17
クレアチニン(0.61~1.04):3.1
尿素窒素(8.0~22.0):37
尿酸(3.6~7.0):6.1(フェブリクでコントロール)
尿蛋白:なし

eGFRの低下が深刻で、10を切ったら透析の準備(シャント)予定。父親と兄がいずれも慢性腎炎を患っており、家系的に腎臓が弱いとのこと。病院では一度低下したeGFRを回復させる手段はないという。手遅れかもしれないが、透析は避けたいので漢方で何とかならないかと来局。
<現在の服用薬>
ベニジピン(血圧降下)
バルディオ(血圧降下)
フェブリク(尿酸抑制)
バイアスピリン(血栓溶解)
ネキシウム(胃酸抑制)

全身症状
寒熱 下肢冷(+)、冷えのぼせ(−)
二便 大便1日2~3行(いつも下利しやすい)
小便1日6~7行、夜間(1行)、色、量ともに平
飲食 食欲(少)、食量(少)
飲水(平)
全身 疲労倦怠(+)
浮腫 なし
睡眠 良好
心神 良好
小さいころから扁桃肥大
頭痛(−)、頭暈(−)
舌質老、舌苔白黄
皮膚 乾燥
四肢 両下肢のしびれ

経過・結果

【第12診】7/127/27

傷病名は「糖尿病性腎症」となっているが、おそらく家系的に腎臓が弱いこと、慢性の扁桃肥大、高尿酸血症などもその背景にあるものと思われる。扁桃肥大、高尿酸血症、糖尿病並びに腎症、体形、皮膚などから考えると一貫堂でいう解毒症と思われるが、ここでは直接的に腎機能の回復を図ることを治療手段とすることにする。自家経験則であるがeGFRの回復には以下の処方を基本に用いている。

芎帰調血飲第一加減+黄耆剤(黄耆多量)+丹参・桃仁+利水剤

処方1

芎帰調血飲第一加減(※)10/48.5g、黄耆10g、桂皮3g、芍薬3g、大棗2g、丹参0.5g、桃仁0.5g、白朮5g、茯苓5g、附子(白河)0.5g ×14日分×2回

(芎帰調血飲第一加減+黄耆桂枝五物湯+丹参・桃仁+真武湯去生姜)

<芎帰調血飲第一加減>

桂皮1、茯苓3、芍薬3、桃仁3、牡丹皮2、当帰2、川芎2、白朮3、乾地黄2、乾姜2、甘草0.5、烏薬2、香附子2、枳実2、陳皮2、木香2、大棗3、延胡索2、紅花2、牛膝2、益母草2、紫蘇葉1、檳榔子1、丹参2  48.5g/1日量

【第3,4診】8/179/3

体調良好。疲れにくくなった。SE(−)。

8/16

クレアチニン:3.12.3

bA1c7.17.1

処方1 do. ×14日分×2回

【第5診】9/18

9/13

eGFR1724

クレアチニン2.32.18

HbA1c7.16.9

処方2)

芎帰調血飲第一加減10/48.5g、黄耆15g、桂皮3g、芍薬3g、大棗2g、丹参1g、桃仁1g、白朮5g、茯苓5g、附子1.5g ×28日分

【第6診】10/17

10/11

eGFR2428

クレアチニン2.181.93

HbA1c6.96.5

体調良好、下利しなくなった。

処方2 do.×28日分

【第7診】11/26

11/17

eGFR2835

クレアチニン1.931.55

HbA1c6.96.5

処方2) do. ×28日分

【第8診~】12/18

12/18

eGFR3535

クレアチニン1.551.57

HbA1c6.56.3

処方2) do. ×28日分~ 現在も服薬中

 

考察

芎帰調血飲第一加減+黄耆剤(黄耆多量)+丹参・桃仁+利水剤について
芎帰調血飲第一加減:下半身の血流改善。慢性疾患・難治性疾患には必ず、血瘀が絡んでいる。腰以下の血流改善には芎帰調血飲第一加減が最適である。下肢静脈瘤があるとより積極的な肯定材料になるが、なくてもよい。
黄耆剤:基本的に黄耆桂枝五物湯を用いている。黄耆桂枝五物湯はもともと「血痺」に用いられた処方である。『金匱要略』においては「血痺」とは気血が不足し、ここに外邪を受けた結果、四肢の麻痺を主症状とする病変を言い、その好発対象として「尊栄人」を挙げている。「尊栄人」とは古代の貴族階級を言い、平素より栄養豊富な美食を摂取し、かつ肉体労働は一切行わない人々を言う。このため肥満し筋骨は脆弱である。以上の病理構造を現代風に転じて、運動不足の人・肥満人・高齢者などの脳(脳血管障害)・心(冠血管障害)・腎の機能低下(糖尿病性腎症、慢性腎不全)に由来する諸疾患に用いる。これらの技法は現代中国・黄煌先生に倣ったものである。詳細は『漢方十大類方』『葯証与経方』『経方沙龍』『経方論剣録』に譲るが、黄煌先生は、文献を見る限りでは、今回のような症例に対し黄耆桂枝五物湯+四味健歩湯(丹参、赤芍、牛膝、石斛)+真武湯などとして用いておられるようである。
また、腎性貧血を伴うものに黄耆桂枝五物湯を帰脾湯に変えて用いて奏功した例がある。
黄耆多量:7~10~15~25~30g/日。
黄耆・丹参・桃仁:黄耆は糸球体の機能回復、丹参・桃仁は糸球体の血流改善
利水剤:真武湯、八味丸・牛車腎気丸など。

今日、人工透析患者の約半分は糖尿病性腎症由来である。漢方薬を用いることで透析への移行を防止あるいは先送りできるのではないかと考えている。漢方薬がこの分野において広く行われることを望む次第である。


腎不全・腎透析を回避するために

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