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症例紹介

不眠と寝汗

【症例128】 71歳、 女性
女性、身長150cm、体重42㎏。やせ型、小柄。

症例キーワード: 不眠・うつ病

主訴

不眠と寝汗。
不眠はここ数年来。特に一昨年、インフルエンザ・抜歯・膀胱炎と立て続けに体調不良に襲われ、それ以来ずっと熟睡できない。入眠はマイスリーを服用しているので問題ないが、中途覚醒が一晩に3~4回あり、その後寝付けず、朝を迎える。中途覚醒時に背中と後頭部のほてりと盗汗あり。その都度肌着を着替え、小便に行く。これらの症状はほぼ毎晩で夏季に好発するが外の季節でも起こる。クーラーのタイマーが切れると上記症状が出るようだ、と。昼寝はしない。
<併用薬>
マイスリー
ソラナックス

全身症状
寒熱 つま先は冷えるが手掌・足心はほてる。
二便 大便:1日2行、快便
小便:1日6~7行、夜間2~3行、尿黄。膀胱炎(一昨年×3回、暑淋)
飲食 食欲(平)、飲水(平)
全身 全身倦怠(+)
心神 午後から体がほてる傾向にあり、ほてるとだんだん訳もなくイライラしてきて頭が混乱してくる。このようなときはソラナックスを服用し何とかしのいでいる。この体のほてりは外気温と明らかに比例する。
舌質暗赤、舌苔微白
皮膚 乾燥して暗褐色

経過・結果

【第1診】

午後からのほてり・イライラ・外気温に比例に注目したい。おそらくはこのほてりが睡眠障害にも影響しているのではないか。これらの症状はほぼ加味逍遙散と考えてよい。加味逍遙散にて様子を見る。

処方1加味逍遙散(エキス)4.0/7.5g 分2 ×14日分

【第2診】

中途覚醒、寝汗、午後のほてり、いずれも改善なし。これは加味逍遙散が不適なのではなく、何かが足りないと考えるべきだろう。何が足りないのか。一般に加味逍遙散が適合するのは30~40~50歳~の女性である。本案は71歳。補腎作用が不足したもの考える。皮膚乾燥して暗褐色・尿黄・暑淋歴・盗汗などから腎陰虚火旺と判断。加味逍遙散に知柏地黄丸を併用することにする。

処方2加味逍遙散(エキス)3.0/7.5+知柏地黄丸3.0/10.5g 分2 ×14日分

【第3診】

中途覚醒時の背中・後頭部のほてり、寝汗いずれも消失。中途覚醒の回数、その後の再入眠いずれも改善なし。午後からのほてり減少。ソラナックスの使用量は半分に減少。

処方2 do.  ×14日分

【第4診】

中途覚醒2回ほどに減少。再入眠も早くなってきた。

処方2 do.  ×14日分

【第5診~】

中途覚醒2回、盗汗なし(マイスリーdo.)。起床時の爽快感(熟睡感)あり。午後のほてりはほとんどなくソラナックスは稀に服用する程度。本人はここまで眠れれば十分満足とのこと。現在も服用中。

処方2) do.  ×14日分~

考察

加味逍遙散の目標に「のぼせ」がある。この「のぼせ」は特徴的である。まず、午後(3時~4時~)からだんだんとのぼせてくること。そして、外気温に誘発されること。よって、夏の午後が一番のぼせてつらい。加味逍遙散は逍遙散に牡丹皮・山梔子を加えることでのぼせに対処できるよう組まれた加味方である。こののぼせの背景には血虚・陰虚があるものと考えられる。それは加味逍遙散が更に加味逍遙散合四物湯、滋水生肝飲(≒加味逍遙散合六味丸)といった具合に発展していることから推察される。
私見であるが、ある処方があって、その処方の本質を理解する方法の一つに、「その処方が臨床的にどのような加味方・合方へ発展しているかを調べる」がある。
逍遙散⇒加味逍遙散⇒加味逍遙散合四物湯、加味逍遙散合六味丸
は逍遙散から血虚陰虚への発展形である。本案においては陰虚火旺があるため六味丸を知柏地黄丸にスライドして用いた。陰虚火旺とは、多くは加齢に伴う全身性慢性脱水の顕著なもので、その具体的目標に皮膚乾燥・口腔乾燥・盗汗・四肢煩熱・尿黄(⇒老淋、暑淋)がある。本案は、午後からのほてりにはじまり夜間の中途覚醒・ほてり・盗汗といったように、いわゆる「虚熱」による一連の症状によるものと考えられる。

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