こどもの円形脱毛症

【症例146】 9歳、 男性
身長137㎝、体重32㎏。
症例キーワード: 円形脱毛症
主訴
【円形脱毛症】
3ヵ月ほど前に発症、きっかけ不明。
頭頂部から後頭部にかけて直径1~2㎝ほどの円形の脱毛が五か所ほど点在している。発汗時、患部がすこし痒くなる。病院にてステロイド外用治療を4週間ほど行ったが効果はなかった。
<病歴>
〇母乳で下利
〇RSウイルスで入院
〇大きく息を吸うと胸が苦しく、わずかに痛む⇒病院で検査するも異常なく原因不明
〇原因不明の発熱(2~3ヵ月に一回くらい)
全身症状
| 二便 | 大便:下利しやすい 小便:6~7回/日 |
|---|---|
| 飲食 | 平 |
| 全身 | 疲れやすく朝が弱い |
| 浮腫 | なし |
| 睡眠 | 良好 |
| 心神 | 良好 |
経過・結果
【第1診】
成書によると円形脱毛症の原因に➀自己免疫説、②ストレス説、③ホルモン説、④遺伝要素説などが挙げられる。現在のところ➀自己免疫説が有力とされている。そこでとりあえず、自己免疫説にのっとり本案を考えてみる。自己免疫異常を漢方でどのようにとらえるか?自家経験則であるが、自己免疫異常に由来する皮膚の病変には柴苓湯が奏功することが多い。もちろん、全体像として小柴胡湯+五苓散の証があることが前提である。本案は、発熱しやすい・胸の苦しさ微痛(胸脇苦満の亜型ととる)といった小柴胡湯の証と、下利・片頭痛といった五苓散の証が混在(つまり柴苓湯)していると考えた。このように全体的に柴苓湯の証が基本にあるうえで、自己免疫異常による(と思われる)円形脱毛症を目標に柴苓湯を用いる。
処方1)
柴苓湯(OTC 2.0/6.0g) 分2 ×14日分
【第2診】
脱毛が減っている。朝、起きるのがつらくなくなった。
処方1) do. ×14日分
【第3~8診】
脱毛部位に毛髪が生え始めている。下利(−)、頭痛(−)
処方1) do. ×14日分×6回
【第9診】
脱毛は痕跡を残さず消失。治癒状態と判断し今回を最後に廃薬。
処方1) do.×14日分
考察
円形脱毛症はなかなか難しい。柴苓湯の都合5カ月の服用により何とか治癒にこぎつけた。本案では「発熱しやすい・胸脇苦満」「下利しやすい・片頭痛」といった小柴胡湯+五苓散の証が基本にあったのでわかりやすかった。
ただ実際のところ、柴苓湯の証が十分に確認できなくても「明らかな免疫性疾患」「免疫が絡んで絡んでいそうな症状」「あれこれやったがなかなかうまくいかない症状」に柴苓湯を選択肢の一つ(※)として用いている。そしてそこそこうまくゆくことも多い。(あまり漢方的に正しくないのかもしれないがこんな風に日々やっています。ただし、柴苓湯(小柴胡湯)の寒性と燥性には十分配慮しすることが大前提ですが…)
※「あれこれやったがなかなかうまくいかない疾患」には柴苓湯の他に駆瘀血薬の併用を常に考慮している。治療処方は証より選択する。




