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症例紹介

アトピー性皮膚炎

【症例147】 38歳、 女性

症例キーワード: アトピー性皮膚炎

主訴

アトピー性皮膚炎。2年ほど前から。きっかけ不明。顔面の発赤・落屑・痒み。
顔面の発赤:濃赤~赤紫、終日。
落屑:顔全体の皮膚が薄く細かくパリパリに乾燥してはがれる。頭皮・髪の生え際・頬に好発。皮膚のきめは粗くいわゆるアトピックスキン。就寝前、プロトピック・ワセリン等で保護しているが起床時はパリパリになっている。不思議なことに日によっては全く発赤・落屑がおこらない朝もある。冬>夏
痒み:非常に強い。終日。
現在、外用(ステロイド、プロトピック)使用中。内服(補中益気湯、温清飲、黄連解毒湯、当帰飲子etc)はあまり芳しくなく、現在服用薬なし。
【病歴】
喘息(小児~18歳位まで。現在は治癒)、腎盂炎(20歳)

全身症状
寒熱 冷え性(++)、冬はレッグウォーマー着用。夏は暑がり。冷えのぼせ(+)
二便 大便:4日/行、便秘しやすい
小便:5~6行/日、夜間2行
飲食 平、食ムラあり
婦科 周期(35日)、経期(5日)、経痛(−)、器質病変(−) 舌:舌質:紅・乾燥
全身 疲れやすい、風邪をひきやすい(咽痛から)、微熱が出やすい
浮腫 下肢に少し
睡眠 入眠悪し(痒みのため)
無汗傾向
扁桃腺が腫れやすい 
頭痛なし

経過・結果

<経過と結果>

第1診

 非常に熱状の強いADである。補中益気湯、温清飲、消風散、黄連解毒湯などが無効であったことは大いに参考になる。つまりこのADは、胃腸を丈夫にして治すADでなく、黄連等で冷ますADでなく、地黄・当帰等で潤すADでもないということである。食ムラ・扁桃腺炎・微熱などから柴胡体質を確認できる。落屑は脂漏によるものと考える。脂漏を伴うADには十味敗毒湯が奏功することを多く経験している。

処方1

十味敗毒湯(1.0/6.0g) 分2 ×7日

第2診

 2包服用し就寝した次の朝、落屑が今までいないほど悪化し、赤み痒みも悪化している。ここで連絡をもらい、すぐに処方1)を中止し、外用のみで過ごすよう指示。7日後、連絡あり。服用前のレベルまで回復した。

 再考。十味敗毒湯で悪化したのであれば脂漏性の落屑ではないと思われる。皮膚の熱状が強くそれによる乾燥・落屑と考えてみる。皮膚の乾燥を伴う熱には石膏を用いる。白虎加人参湯がその代表である。白虎加人参湯であるならば口渇があるはずである。そこで問診カードを見てみると、なんと口渇の項目を確認していない。多分、小柄な女性なので口渇などないであろうという思い込みで省略したのだろう。急ぎ口渇の有無を確認する。「1日2.0~2.5ℓほど飲んでいる」とのこと。白虎加人参湯の「大熱」「大汗」「大渇」のうち「大熱(皮膚炎)」と「大渇」はそろった。「大汗」は慢性に経過する場合は発現しないことも多く経験している。そこで白虎加人参湯を用いることとする。

処方2

白虎加人参湯(6.0/12.0g) 2 ×7日分

第3、4

 服用翌日から落屑は激減。ただし、赤み・痒みはわずかに減少したくらい。1週間後の飲水量(1.5~2.0ℓくらい)。ここで処方2)を続けてみることにする。

処方2 do. ×14日 ×2回

5

 症状は横ばい状態。あれこれ話を聞いていると「もともと微熱が出やすく、微熱が出るとその翌日はきまってADが決まって悪化する」という。さらに「最近気づいたことであるが耳の後のグリグリが大きいように思う。それがいつからなのかはわからない」と。ところで、そもそもADは1型アレルギーで本質的には免疫の病気である。白虎加人参湯は消炎作用はあるが免疫調整作用はないと思われる。発熱・耳の後ろのリンパ節の腫脹などは小柴胡湯を思わせる症状である。そこで小柴胡湯を、より免疫性症状にバージョンアップした柴苓湯を併用することにする。

処方3

柴苓湯3.0/6.0g+白虎加人参湯(6.0/12.0g) 分2 ×7日分

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 効果はわからないが、少なくとも悪化はしていない。もう少し様子を見ることにする。

処方3 do. ×14×2回

8診~

 赤み・痒み・落屑いずれも良好。皮膚のきめも整い、ゴワガワ・ザラザラした感じがなくなる。飲水量(1.5ℓ/日くらい)。微熱は今のところ出ていない。耳の後ろのグリグリも心なしか小さくなったみたいという。良好と判断し処方3)を現在も継続服用中。今後、折を見て漸減の予定。

考察

かろうじて略治状態にたどりつけた症例である。
今回の反省点
➀脂漏の落屑と燥熱の落屑とを取り違えたこと
②「口渇」を見逃したこと

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