左肩腱板断裂後の不調

【症例171】 79歳、 男性
身長170㎝、体重76㎏。がっちりとした体格
主訴
左肩腱板断裂後の不調
ゴルフ中に左肩の腱板断裂を起こす。手術はせず、内服のみの治療。断裂との関係はわからないが、それから半年ほどしてから両手甲に直径1㎝ほど、赤紫色・淡紅色・白色の結節ができる。また、指の股にも1㎜ほどの結節あり。このためか両手指の動きが硬く、スムーズに動かない。また、ゴルフスイング時の握力が落ちている。ゴルフクラブを握ると指が突っ張って痛む。病院からのヘパリン類似物質クリームを使用しているが、その効果はよくわからない。漢方で何とかならないかと来局。
<服用薬>
アーチスト(心房細動、高血圧)
アスピリン
全身症状
| 寒熱 | 下肢冷えあり |
|---|---|
| 二便 | 大便:1日1行 小便:1日6~7行、夜間2行。 |
| 飲食 | 食欲:多 飲水:多 |
| 全身 | 年の割には元気な方である。月2回のゴルフを欠かさない。 |
| 浮腫 | なし |
| 睡眠 | 良好 |
| 心神 | 良好 |
| 汗 | 平 |
| 舌 | 舌質微紅、舌苔白 |
| 血圧 | 140~90 |
経過・結果
<経過と結果>
【第1診】
結節を断裂後の増殖性の病変と捉え、これを血瘀と考える。疎経活血湯を用いる。
処方1)
疎経活血湯4.5g/4.5g 分2 ×14日×10回
【第2診】
結節の色調は薄くなるも手指を動かす際の硬さはかわらず。駆瘀血作用を増強。
処方2)
疎経活血湯3.0g/4.5g
桂枝茯苓丸3.0g/6.0g 各分2 ×14日分×4回
【第3診】
改善なし。そこで、結節を血瘀でなく痰飲の凝結と考える。
処方3)
清湿化痰湯7.2g/7.2g 分2 ×14日分×2回
【第4診】
ゴルフクラブを握るとき、指が伸びる感じがし、その際の痛みも軽減している。
処方3) do. ×14日分×4回
【第5診~】
手甲の結節が小さく、かつ柔らかくなっている。日頃から手甲を自分でマッサージしているが、先日その途中で結節部が「ピシッ」と音がし(たような感じ)、その直後から指の動きが劇的によくなったという。処方3)を都合半年ほど服用し、手甲の結節は1個をのこすのみ。現在も服用継続中。
考察
結節が痰飲によるものではないか、と考えるに至ったきっかけが次の医案である。
『橘窓書影』巻一
「銀座下役、甚兵衛、息、年十六。顋下少塊あり。時々痛を発し、数年愈えず。医、或は瘰癧とし、或は気腫とす。余、診して曰く、其の塊、柔軟にして筋脈に固着するの形なく、又、歯齦に通じて頑固、膿を醸すの勢ひなく、恐らくは、瘀液の湊会に出づ。俗に所謂痰核是なり。乃ち二陳湯加皂角刺を与へ、五倍子、朴硝、大黄、天南星四味、研末醋に調し核上に貼ず。数旬にして核全消し、再腫痛の患なし。」
同じ二陳湯加味の清湿化痰湯なら有効なのではないかと思い用いた。期待以上の効果で内心驚いている。
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