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症例紹介

突発性難聴

不妊、流産癖

【症例11】 32歳、 女性
身長150cm、体重48㎏。やや肥満型。

症例キーワード: 難聴

主訴

 一ヶ月くらい前から低音が効きとりにくい(右耳のみ)。また耳鳴り(ガーガー)と、耳介裏面の付け根あたりの痛み(圧痛、自発痛)が同時に発症し、ほぼ毎日ある(いずれも右耳のみ)。朝起きてしばらくは比較的聞き取りやすいが昼・夜になると聞き取りづらい。五ヶ月前に生後七ヶ月の自分の子供を亡くしたことが尾を引いているかもかもしれないとのこと。病院でステロイド剤とビタミンB12が出ている。

全身症状
寒熱 手足は冷えやすい。冷えのぼせなし。
二便 大便1日1行あるが量は少ない。
小便1日7~9行、内容に問題ない。
飲食 食欲は平、飲水は1日2ℓほど(コーヒーを好んで飲む)。
目・耳・鼻 目赤が顕著にある。これも難聴とほぼ時期を同じくして発症している。病院では結膜炎との診断で点眼薬と適宜使用している。
月経 周期(28日)、経期(5日間)、経痛(月経開始1~2日間)、経血は色・量ともに問題ないが20㎜程の血塊が2~3個出る。
萎黄
舌質胖大、瘀点あり、舌苔微白、舌下の小瘀点あり。
皮膚 あざが出来やすい。

経過・結果

第1診

 子供の死亡は相当大きなショックであったと思う。これが原因で気滞上衝を引き起こし突発性難聴となったとも考えられる。しかし、難聴のありようをよくよく注意してみると、難聴はムラなくほぼ毎日あること、耳鳴・耳介裏面付け根部の痛み・目赤が難聴と同時に発症したことなどを考えると血瘀上衝によるものではないかとも考えられる。また、全身症状においても気滞の症状はなく、月経状態(経痛・血塊)・舌症・皮下出血といった点から血瘀が確認できる。以上のことから血瘀上焦の突発性難聴と考え、活血化瘀、下気降逆を目的に

処方1)桂枝茯苓丸料を14日分投与。

桂枝茯苓丸料
桂皮(ベトナム)4.0、茯苓(朝鮮)4.0、芍薬4.0、桃仁4.0、牡丹皮4.0

第2診

 処方1)を服用しているうちに月経が予定通りはじまった。経痛・血塊はなかったが、経血が半分ほどに減少した。難聴は全く改善がない。そこで血瘀上衝を強く下すべく

処方2)桃核承気湯を14日分投与。

桃核承気湯
桃仁5.0、桂皮(ベトナム)4.0、芒硝(硫酸マグネシウム水和物)2.0、大黄(錦紋・酒炙)1.0~0.3、甘草(炙)2.0。

第3診

 著効あり。服用5日で難聴・耳鳴・耳介裏面付け根部の痛み・目赤のすべてが消失。ただ、服用しはじめは大黄の量が多かったためか下利したので大黄だけは量を減じて煎じてもらった(大黄は別砲包とし、煎じる時間・量を適宜調整してもらうようにしている)。その後、都合2ヶ月間服用した後廃薬。2年ほどの後、他の用件で来局の際に難聴の事を問うてみたがその後は出ていないという。

考察

 今回の医案の最大のポイントは桂枝茯苓丸料と桃核承気湯との使い分けであろう。いずれも桂皮が配合されているので上衝に対応できる。しかし、上衝の程度というか性格が若干異なるように思う。もちろん桃核承気湯のほうが強い。具体的には頭痛・衄血・歯痛・歯齦出血などが桃核承気湯にはよく見られるが桂枝茯苓丸は弱い。今回の医案においては難聴・耳鳴・耳介裏面付け根痛・目赤を血瘀上衝と捉え、結果として、奏功したものである。また、便秘の有無も鑑別のポイントの一つといわれている。便秘する場合は桃核承気湯、しない場合は桂枝茯苓丸、というのが一般的な見方である。しかし、実際には血瘀上衝が強ければ、今回のように、便秘がなくても桃核承気湯を使うこともあるし、便秘をしていても上衝が軽ければ桂枝茯苓丸加大黄といった具合に対処することもありうる。このあたりが難しい。処方構成においては、桂皮に甘草が配されているかどうかの差ではなかろうかと考えている。つまり、上衝の基本処方である桂枝甘草湯を内包するかどうかの違いである。この両者における甘草の差は大きいと思う。

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