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症例紹介

書痙

【症例14】 49歳、 男性
身長171cm、体重66kg、中肉中背。

症例キーワード: 書痙

主訴

 5年ほど前、仕事の都合で、人前でホワイトボードに字を書く機会があった。その際、手指がガチガチに強ばりブルブルと震え、字が全く書けなかった。以来、人前でなくても誰かが近くにいると視線を感じて上記症状が出て字が書けない。実は小さい時から現在に至るまでひどい「上がり症」である。例えば、小学校の音楽の縦笛のテストで、手が震えて全く吹けないこともあった。そのほかにも上記の震え症状とともに手掌に発汗を伴うことが多い。

全身症状
寒熱 平。
二便 大便1日1~2行、普通便。
小便1日5~6行、色量ともに平。
飲食 ともに平。
心神 神経質、上がり症、緊張すると胸のドキドキが激しい。
全身的に出やすい。また上記のごとく、緊張時に手掌に発汗あり。
緊張時には声が震え上ずり、口の中が乾燥し、しきりにつばを飲む。
萎黄
舌質微紅、舌苔微白

経過・結果

第1診

書痙をはじめ、上がり症、手掌の発汗、胸のドキドキ、発声の異常・口乾などは肝気の疏泄失調によるものと思われる。疏肝解鬱、舒筋解痙を行うべく

処方1)柴胡桂枝乾姜湯合半夏厚朴湯を7日分投与する。

柴胡桂枝乾姜湯合半夏厚朴湯
柴胡(三島)3.0、桂皮(ベトナム)1.5、栝楼根1.5、黄芩1.5、牡蠣(煅)1.5、乾姜1.0、甘草(炙)1.0、半夏3.0、茯苓2.5、厚朴(姜炙)3.0、紫蘇葉1.5。

第2診

 とてもよい感じである。人前での緊張感は同じであるが、以前よりも指の震え・震え・口乾・胸のドキドキいずれも軽くなった。ただどういう訳か手掌の発汗だけは変わらない。それでも、とてもうれしいという。そこで自信が十分に持てるようになるまで服用を続けることとし、その後都合42日服用し書痙など納得のいく結果が得られたとの事(ただし、手掌発汗だけは結局改善しなかった)で廃薬。

考察

 治療にあっては、疏肝解鬱作用と同時に精神緊張に伴う心悸・発汗異常・口乾といった症状に対応できる柴胡桂枝乾姜湯を中心に考え、これに舒筋解痙作用のある半夏厚朴湯を合して用いた。肝気鬱結による筋の痙攣性の症状には抑肝散(加芍薬厚朴)が一般に用いられるが、ただ今回の場合、抑肝散にはない手掌発汗、口乾などの症状があったのでこれを否定した。ただ、正直なところ柴胡桂枝乾姜湯でゆくか、抑肝散でゆくか最後まで迷ったのも事実である。『症候による漢方治療の実際』の「心悸亢進」において、この点について大塚敬節先生も「・・・この抑肝散加陳皮半夏の証と柴胡姜桂湯の証とはよく似ている・・・」と指摘しておられる。
 また服薬7日間で改善の兆候が出ていることにも注意したい。私の経験では、血瘀の絡まない単純性の肝気鬱結の治療においては、うまくゆく時は比較的短時日で改善し、逆にそうでない場合は自重しても改善のないことが多い。このあたりも肝気鬱結の特徴のひとつであろう。また、このような症状の場合、薬物に対して過敏なことがあるので、少量(通常量の1/2~1/5位)からはじめるようにしている。

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