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症例紹介

胸痛

【症例93】 54歳、 女性
身長155cm、体重43㎏

症例キーワード: 胸痛

主訴

胸痛。
胃痛から始まり心痛になる。20~30分ほど持続する。同時にこれが放散してアゴ痛、歯痛(左側)、肩痛(左側)、頭痛となる。夜間好発。4ヵ月前に病院を受診。狭心症かもしれないとのことでニトロ製剤を服用するも無効だったので今は通院していない。本人はネットで調べて「微小血管狭心症」ではないかという。更年期障害様のホットフラッシュ、めまいもある。

<病歴>
胆石(25歳で胆嚢摘出)
子宮腺筋症(50歳で子宮摘出)
パニック障害
神経性膀胱炎、過活動膀胱

全身症状
寒熱 手足とも冷え性
二便 大便:1日1行、ただし下剤使用
   小便:1日10~
飲食 食欲:平
   飲水:平
全身 疲れやすい
浮腫 なし。
睡眠 良好。
心神 非常に神経質、敏感体質。
平。
頭痛なし
胃腸 胃脘痛(歴、ストレス性)
目・耳・鼻 歯ぎしり、かみしめ
月経 閉経。
面色白・萎黄
舌質微紅、舌苔無
皮膚 皮下出血(+)、下肢静脈瘤(+)
体型 やせ型
血圧 120~70

経過・結果

【第1診】

 平素から非常に神経質・敏感体質であること、特徴的な病歴(胆石、パニック障害、神経性膀胱炎、ストレス由来の胃痛)から強い気滞が考えられる。また、心下痛が左(歯、肩)に放散すること、その痛みが夜間に好発すること、皮下出血、下肢静脈瘤、病歴(子宮腺筋症)から血瘀が考えられる。この気滞と血瘀とが結合して心痛を形成していると判断。さらに便秘もあることから便秘を伴う血瘀の上衝も同時に考慮するべきと判断。

処方1)血府逐瘀湯4/7.5g 分2 14日分

処方2)桃核承気湯1.5/6g 分2 14日分

【第2診】

 良好。この14日間、心痛は起こっていない。ホットフラッシュ・めまいも軽減。便通はもう少し。過活動膀胱は変わらず。

処方1) do. 分2×14日分

処方3)桃核承気湯2.5/6g 分2×14日分

【第36診】

 良好を維持。便通も今の量でよい感じ。

処方1) do. 分2×14日分

処方3) do. 分2×14日分

【第7診】

 家庭内でトラブル発生。その夜に久しぶりに心痛あり。その後から処方1)3)を服用するも心痛止まず。気滞を改善すべく四逆散を加えることにする。

処方4)血府逐瘀湯4/7.5g+四逆散2/6g 7日分

処方3)桃核承気湯2.5/6g 分2 7日分

【第8診】

 良好。今までの中で一番合っている感じ。この後、同様の家庭内トラブルあったが心痛発生せず。以後も処方4)3)を継続服用中。

 

考察

 気滞血瘀の典型例であろう。
血府逐瘀湯の出典である『医林改錯』には「主治19病変」を挙げている。理論から導いた症状ではなく、徹底した実証主義・経験から導き出された症状と言われて臨床的は高い。血府逐瘀湯臨床応用の最基本症状である。以下参考までに列挙する。
1. 頭痛
2. 胸痛
3. 肝気病
4. 瞀悶(ぼうもん)
5. 急躁
6. 胸不任物
7. 胸任重物
8. 夜睡夢多
9. 不眠
10. 夜不安
11. 小児夜啼
12. 心跳心忙
13. 灯籠病
14. 晩発一陣熱
15. 天亮出汗
16. 乾嘔
17. 呃逆
18. 飲水即嗆
19. 食自胸右下

芎帰調血飲第一加減同様に私の大好きな駆瘀血剤である。

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