急性膵炎後の背中の痛み
【症例92】 83歳、 女性
身長158cm、体重56㎏
症例キーワード: 腹痛
主訴
急性膵炎後の背中痛
H27.8月急性膵炎にて入院。以後整腸剤を1年間服用続けた。
H28.12月、突然背中~左脇が痛みだす。病院で検査するも異常なし。整腸剤が再度出され、痛みが激しい時にブスコパンを頓用するようにとのことであった。痛みは引きつるように痛み、ひどい時は左わき腹がコチコチになるという。発症時の吐き気・食欲不振はない。また胆石もない。現在、月に2~3回痛みが発生しブスコパンを服用している。痛みは発作性に起こる。きっかけは不明。
全身症状
寒熱 | 手足は冷える傾向。 |
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二便 | 大便2日/行。 小便5~6行/日、夜間1~2行、色・量ともに平。 |
飲食 | 飲食(平)、飲水(平) |
全身 | 年の割には元気である。 |
浮腫 | 下肢に少し。 |
睡眠 | 不眠にてデパス使用。 |
心神 | 不整脈あり。 |
汗 | 平。 |
月経 | 婦人病歴なし。 |
面 | 色黒 |
舌 | 老・裂紋あり。舌苔:無 |
体型 | 急性膵炎発症前は体重64㎏だったが現在は8キロ減。それでもやや太っている。 |
血圧 | 降圧薬服用中。 |
経過・結果
【第1診】 痛みが張った痛みであること、発作性であることなどから気滞による痛みと判断。部位が背中~左脇に限定していることから柴胡類方が適当と考え、この中から芍薬甘草湯を内包する四逆散を選択。 処方1)四逆散(エキス散)3.0g/6.0g 分2 14日分 【第2診】 まあまあいい感じ。この2週間痛みは出ていない。便通が毎日あるようになった。 処方1) do.×14日分 【第3、4、5診】 良好を維持。痛みは出ていない。定期的に出ていた不整脈も出なくなった。 処方1) do.×14日分~ 【第6診~】 天気が崩れる前に1回だけ痛みが出たがごく軽微であった。処方1)で十分気を流せていると判断し、漸減ののち廃薬予定。 |
考察
四逆散は体幹部の発作性疼痛に有効である。とりわけ片側性疼痛に良い。たとえば、急性膵炎はもちろん胆石・胆のう炎など胆嚢の病変、尿路結石、脾弯曲症候群など。更には上記疾患を持つ者の腰痛・股関節痛・膝痛にも四逆散は応用できる。これについて和田東郭は四逆散を「左右ノ気」を整えると表現している。つまり内臓筋肉の異常痙攣が慢性化すると、骨格筋緊張の左右差(ひずみ)を生じこれが腰以下の片側性の痛みの原因になることがあると解釈しているがどうであろう。
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