トップページ > 症例紹介 > 痙性斜頸(頸部ジストニア)

症例紹介

痙性斜頸(頸部ジストニア)

【症例123】 28歳、 男性
身長173cm、体重66㎏。がっちりした体形。

症例キーワード: 斜頸

主訴

痙性斜頸。
頭部が左後方に、間歇的に、ねじれるように、引っ張られるように屈曲し、1~2秒ほどで元の位置に戻る。これを10秒おきくらいにずっと繰り返している。痛みはわずかにある程度。発症は約3か月前、原因は職場の心理的ストレスであることは間違いないとのこと。発症直後に病院へ行き、「ボトックス注射+アーテン内服」の治療を受けるも現在のところ効果はほとんど表れていない。現在休職中。斜頸そのものが苦しいことはもちろんのこと、周囲から驚きと好奇の目で見られることがつらいという。寝るときは枕を首に密着・固定させて何とか寝ている。就寝中に発作は起こらない。

全身症状
寒熱 冷え性(−)、首は冷え冷えしている。冷えのぼせ(−)
二便 大便:1日1行
小便:1日5~6行。色黄。
飲食 良好
全身 疲労倦怠(−)、容易感冒(−)
浮腫 なし
睡眠 良好
心神 もともとあがり症でメンタルは弱いという(自ら「チキンハートです」と自嘲気味に話す)。緊張時しばしば手指の震え・動悸あり。
緊張時に腋・手掌に多発
頭痛あり(毎月2~3回、ロキソニン使用)
胃腸 良好
目・耳・鼻 良好
舌質微胖大、微歯痕あり。舌苔白。

経過・結果

【第1診】

ストレスが原因であることは明らかである。肝気鬱結⇒肝風内動といったところか。疏肝解鬱・柔肝解痙すべく四逆散を基本に用いることにする。更に解痙作用を強化するために芍薬甘草湯を併用する。

処方1四逆散(長倉・原末)5.0/6.0g+芍薬甘草湯(エキス散)2.0/6.0g 

分2 ×14日分

【第2診】

無効。そこで、さらに解痙すべく芍薬甘草湯を増量し、厚朴を加味する。

処方2) 四逆散5.0/6.0g+芍薬甘草湯3.0/6.0g+厚朴末3.0g 

分2 ×14日分

【第3診】

無効。そこで、さらに解痙すべく白僵蚕を加味する。

処方3 処方2)+※白僵蚕エキス1.0g 分2 ×14日分

※白僵蚕エキス:エキス1gは原生薬3.72gに相当

【第4診】

少し良い感じ。発作の頻度が減った。そこで白僵蚕を増量する。

処方4 処方2)+白僵蚕2.0g 分2 ×14日分

【第5診】

ほとんど発作出ず。頭痛も全く出ず。

処方4) do. ×14日分

【第6診】

この後も良好を維持。結果、処方4)×14日分×12回(ほぼ半年)ほど服用を続け、この後半分量に減量し、これを3ヵ月継続し症状の後戻りがないことを確認の上で廃薬。

 

考察

白僵蚕の加味によって一気に効果を発揮した例である。動物生薬の効き目はすごいなあと思う。白僵蚕は、カイコの幼虫が白僵病菌の感染により白僵病で硬直死した乾燥虫体である。その表面は白い粉が付着し、切面は褐色透明でとにかく硬い。独特の生臭みがある。一番の特徴はその硬さで、白僵蚕のごく初めの薬効の発見はここ由来したのかもしれない。つまり同類は同類を治すという象形薬理的発想である。この場合、硬いもの(白僵蚕)は硬いもの(硬い筋肉)を治す、ということである。
白僵蚕の漢方処方への応用は烏薬順気散と強心湯(紅花1.5g、白僵蚕3.0g、棕櫚葉2.0g、甘草2.0g 分量は『黙堂柴田良治処方集』による)が有名であろうか。いずれも脳梗塞の後遺症(痙性麻痺)などに活用されている。その疏風解痙作用を期待しての配合と思われる。浅田宗伯著『勿誤薬室方函口訣』の強心湯の解説に「この方(強心湯)は四逆散、附子瀉心湯、桂枝加朮苓附湯と証に随ひ合用す」とある。このことは四逆散と白僵蚕との併用が痙攣性疾患に有効であることを示していると考えられる。更に山田業精著『井見集付録』においては、様々な難治性・痙攣性の症状に業精先生は四逆散や抑肝散に羚羊角を加味して効果を収めておられた。例えば四逆散加羚羊角・釣藤鈎、抑肝散加羚羊角・芍薬など。羚羊角は今日、一般に入手困難である。何か代用になるものはないかと探してみる。『漢薬の臨床応用』の羚羊角の項目に「羚羊角が高価で入手しにくい場合は羚羊角骨・綿羊角で代用する。釣藤鈎と白僵蚕を併用してもよい。」とある。つまり両説を合わせると四逆散加羚羊角は四逆散加釣藤鈎・白僵蚕である程度代用できることになる(ただ、実際には業精先生は、文献上、白僵蚕を使った形跡はないが…)。以上が四逆散に白僵蚕を加味した理由である。
 四逆散加厚朴は、四逆散証でその気滞が他の中空臓器に波及したものに用いる。具体的には気鬱便秘・気淋に用いている。

ご相談方法

基本的には直接ご来局の上でのご相談をお願いしております。
ただし、諸般の都合によりご来局いただけない場合は電話・ファックスでも応対しております。

メールでお問い合わせ

ご相談・ご予約メールフォーム

※初めての方はメールフォームからお問い合わせ頂くとスムーズです。

お電話でお問い合わせ

電話 099-239-7100

受付時間 月~土 10:00~18:00
※営業時間外でも上記電話番号より携帯電話に転送されるので通話可能です。

FAXでお問い合わせ

Fax. 099-239-7100

24時間受付中
後日、ご案内のお電話をさせて頂きます。

トップへ戻る