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症例紹介

機能性ディスペプシア

【症例151】 21歳、 男性
身長174㎝、体重58㎏

症例キーワード: 胃痛・胃もたれ

主訴

機能性ディスペプシア。
胃の不調のため病院を受診し、胃カメラなど検査したが器質的異常は認められず、機能性ディスペプシアと診断される。
胃の不調の内容は次の通り。食欲は普通にあるが食べ始めるとすぐにもたれ感ですぐに食べられなくなる(食事量は発症前の50%くらい)。食後に腹部膨満感・げっぷ・吐き気(軽微)に苦しむ。胃痛(-)。発症はR4.3月ごろ発症。飼っていたペットの死がきっかけかも。体重は発症前65㎏、現在58㎏。病院にて半夏厚朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯および六君子湯をそれぞれ一月ほど服用するも無効。

全身症状
寒熱 四肢冷(+)、冷えのぼせ(−)
二便 大便:1日2~3行 平素より軟便傾向 あっさり味を好む
小便:1日5~6行 
全身 疲労倦怠(+)、容易感冒(−)
浮腫 なし
睡眠 良好
心神 心配性
手掌発汗傾向

経過・結果

【第1診】

 胃もたれおよび食後の膨満感・げっぷ・吐き気は胃気の滞り。ペットの死がきっかけかも、という点から肝気も影響しているものと思われる。そこで四逆散を用いたいところではあるが、平素からの疲労倦怠・軟便などの脾胃虚弱を考慮し柴芍六君子湯とする。

処方1)柴芍六君子湯3.0/6.0g 分2 ×7日分 

【第2

 著効あり。それまで食べられなかった朝食がおいしく食べられるようになった。胃もたれ(↓↓)、膨満感(↓↓)、げっぷ(消失)。漸減ののち廃薬予定。

処方1) do. ×14日分

考察

柴芍六君子湯について
柴芍六君子湯は本朝経験方で、六君子湯加柴胡・芍薬である。『勿誤薬室方函口訣』に「四逆散の症にして胃虚を兼ぬる者を治す」とある。柴胡は疎肝解鬱薬(ある種の鎮静薬)、芍薬は柔肝止痛薬(ある種の鎮痙薬)である。柴胡と芍薬を併用することで精神緊張による諸症状に用いることができる。この組み合わせを柴芍(さいしゃく)といい、肝気鬱結に用いる基本薬対であり、四逆散、柴胡桂枝湯、大柴胡湯、加味逍遙散などの基本骨格をなす。
柴芍六君子湯に似た処方で香砂六君子湯という処方がある。香砂六君子湯は六君子湯加香附子・縮砂で、これは六君子湯症を基本に胃もたれ・腹満などの脾胃の気滞を兼ねるものに用いる処方である。ならば柴芍六君子湯は六君子湯症を基本にストレスおよびそれに伴う胃痛などに用いる処方であろう、と安直に考えてしまう。だがこれは正しくない。名前に引っ張られてしまうのである。六君子湯症にこだわると柴芍六君子湯は使いこなせない。柴芍六君子湯の基本目標は六君子湯症ではなく四逆散症なのである。ここに四逆散を用いた状況があるとする。もし、脾虚を兼ねる場合、四逆散そのままを用いると都合が悪い。枳実が障るのである。枳実の理気・破気作用(蠕動運動促進作用)は強い。脾虚のものに枳実を用いると腹痛・腹満・下利をおこす。このような場合、枳実をより緩和な理気薬・陳皮に変え更に健脾薬を配合する。そうして出来上がった処方が柴芍六君子湯である。柴芍六君子湯はいわば「マイルド四逆散」なのである。『勿誤薬室方函口訣』の「四逆散の症にして胃虚を兼ぬる者を治す」とはまさに正鵠である。
結論として、柴芍六君子湯の運用の最大のコツは、これを六君子湯加味方とするのではなく、四逆散変方とすることである、と考えているがさてどうであろうか。

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