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症例紹介

発汗過多

【症例154】 27歳、 男性
身長174㎝、体重60㎏、やせ型。大学院生。

症例キーワード: 04.精神・神経科10.代謝・内分泌・免疫11.循環器科発汗過多

主訴

手掌・足心・腋下の発汗過多。
2~3年ほど前から。仕事の緊張からか。夏・冬、精神緊張時に悪化。休日など安息時は起こらず。発汗症状に、のどのつまり感・息苦しさ・吐き気・胃もたれ・げっぷ・頻尿・頻脈を伴う。一月後、大切な論文発表があり、その際上記症状が起こらないようにしてほしいとのこと。心療内科にて抗不安薬を服用するも無効だった。

全身症状
寒熱 冷え性なし
二便 大便1日1行(下利しやすい)
小便1日7~8行
飲食 食欲(平)、食量(平)、
全身 倦怠無力(++)、車暈(+)
心神 神経質、緊張しやすい。
頭 起床時および緊張時に口苦あり。
胃腸 胃痛(-)、緊張時にあくびと同時にげっぷが出る。また心下部がグーグー鳴る。大学2年のころから腹部膨満感を感じるようになり現在に至る。起床時に口が苦いことがある。
舌 舌質平、舌苔微白

経過・結果

<経過・結果>

【第1診】

 手掌・足心・腋下の発汗は、熱を放散するための発汗(体幹部)とはその性格が大きく異なる。多くの場合、精神緊張に由来する発汗である。本案でも神経質・緊張しやすいといった性格が基本にあるのであろう。ここで、発汗異常時の随伴症状に注目したい。発汗異常時の「のどのつまり感・息苦しさ・吐き気・胃もたれ・げっぷ・頻尿・頻脈」、さらに緊張時の「あくびと同時にげっぷが出る。また心下部がグーグー鳴る。大学2年のころから腹部膨満感を感じるようになり現在に至る。起床時に口が苦いことがある」など。これらはすべていわゆる「肝気鬱結」といわれる症状群である。そして、これが発汗異常に波及したものと考えられる。肝気鬱結の基本処方は四逆散である。また、口苦・面色帯灰黄褐色も柴胡体質を肯定する材料である。しかしながら「大便1日1行(下利しやすい)」「倦怠無力(++)」といった脾虚の症状が同時に存在する。そうなると四逆散そのままでは使いづらい。そこで四逆散に脾虚を兼ねる処方として柴芍六君子湯を用いることにする。

処方1) 柴芍六君子湯(3.0/6.0g) 分2 ×7日分 

【第2診】

著効あり。発汗(↓↓)、随伴症状(↓↓)、気分が落ちついている。

処方1) do. ×14日分 ×2回

【第3診】 

懸案事項だった論文発表も何とかやり過ごせた。症状は安定を維持。継続服用を勧めたが経済的理由にて服薬終了。

 

考察

 心因性の発汗過多には四逆散が応じる場合がある。全身症状から柴芍六君子湯を用いて著効を得た症例である。実際のところ柴芍六君子湯を発汗過多に用いた前例はなく、うまくゆくか非常に不安であった。
 四逆散を心因性の発汗過多に用いる場合、柴胡疎肝湯か荊芥連翹湯に変方して用いている。前者はガス・痛み、後者は解毒症体質が目標になる。ただし慢性化したものはこれだけでは時に効果不十分で、その際は桂枝茯苓丸を併用するとよい場合がある。汗腺そのものが壊れているのであろう。
 

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