1)左(親指、人差し指、中指)の痛み・しびれ、2)右親指のばね指

【症例149】 67歳、 女性
身長149㎝、体重68㎏
症例キーワード: 関節痛
主訴
1)
夜間に悪化し、痛みで目覚めることもある。半年ほど前から。きっかけ不明
2)
酷使したときに好発。
病院にてプレガバリンを服用するも眩暈にて中止。
全身症状
| 寒熱 | 冷え・ほてりなし |
|---|---|
| 二便 | 大便1日1行 小便1日10行(夜間2~3行) |
| 飲食 | 良好 |
| 婦科 | 有経時、子宮筋腫(5~6センチほど)があったが閉経とともに縮小。特に処置はせず。 舌:舌質赤紫・瘀点あり。 面:目の周囲の褐色のシミ |
| 全身 | 倦怠無力(なし)、容易感冒(なし) |
| 浮腫 | なし |
| 頭 | 頭痛(なし)、頭暈(なし) |
| 皮膚 | あざができやすい |
経過・結果
【第1診】
症状1)はその特徴的症状から「手根管症候群」と考えられる。手根管症候群は漢方的には腱の血瘀である。「ばね指」も同様の病理構造である。夜間の悪化傾向や全身症状(舌診・眼囲のしみ・あざができやすい・子宮筋腫の履歴)などをみても血瘀を肯定する材料は多くある。そこで腱の血瘀を取り除くべく疎経活血湯用いることにする。
処方1) 疎経活血湯(OTC、4T×3回) ×1瓶(14日分)
【第2診~】
著効あり。右手ばね指はほぼ消失。左三指の痛み・しびれも50%ほどに改善。
半年間の服用を勧める。
処方1) do.
【第6診】
服用3か月、良好を維持。半年服用後漸減・廃薬の予定。
考察
〇手根管症候群について
手根管とは手根骨と屈筋支帯とで構成されたトンネル状の構造をいう(手根管という管(くだ)があるわけではない)。ここを9本の腱と正中神経が通っている。この9本の腱は指につながっている。様々な原因により手根管が圧迫され、これにより正中神経が絞扼されて親指・人差し指・中指・薬指(半分)に痛み・しびれ・ピリピリ感が起こる。これらを手根管症候群という。その原因として、①手首の酷使によるもの、②手首の骨折などの外傷性のもの、③糖尿病・痛風・甲状腺機能低下症などの代謝性・免疫性のもの、④妊娠・出産・閉経をきっかけにおこるもの、⑤原因不明、などがあげられる。疫学的には40歳後半から好発し、男女比は1:4と女性に多い。治療はNSAIDS・VtB12の内服、ステロイドの局所注射、無効の場合は手根管解放術を行う。
〇手根管症候群を漢方的に考える
症状部位が固定していること、夜間悪化傾向にあること、および発症原因の①~④から、その病理構造として血瘀が考えられる。
〇手根管症候群と疎経活血湯
手根管症候群の病理構造は血瘀に違いないが、その病変部位は体表部にある。よって駆血瘀薬のみよりもこれに発表薬を配合したほうがより効果的である。この場合の発表とは体表部の血管を拡張し血液循環をよくするという意味である。この駆血瘀薬と発表薬の組み合わせを持つ処方こそが疎経活血湯である。
〇類似症状と疎経活血湯
「腱(筋肉)の血瘀」という病理構造をもつものであれば手根管症候群にかかわらず疎経活血湯は効果を発揮する。たとえば「ばねゆび」「腱鞘炎」「テニス肘」「寝違え」など〇先哲の言葉
『コタロー販売協力会全国大会 1993年 11月9日』より抜粋
「P23 疎経活血湯は手根管症候群とか筋の疎経を指すのであるから、関節の病気よりは経絡の病気や体の筋が痛む場合に使うほうが良いでしょう。中風で肩手症候群というのがあります。肩から腕にかけてぽってり腫れて痛むのですが、ちょっと触っても飛び上がるほど痛みます。これに疎経活血湯を飲ますと著効があります。もしそのような患者があれば使ってみてください。いずれも飲めばとにかく15分で楽になります。疎経活血湯に、肩の痛みであれば葛根加朮附湯を合方してやれば非常に良いと思います。 山本巌先生談」
『漢方治療百話』より抜粋
「・・・この処方の分量を見ると活血の剤が量的に君位にあり、行湿の剤が数的には多い。私は本方証の標準を、多く青ぶくれした夫人に置いているのであるが、その活血行湿の必要がこれによって了解できると思う。もし瘀血の多いものには紅花を加え、あるいは他に駆瘀血剤を兼用する。また本剤証の患者は血燥による便閉を訴えるものが多い。大黄を加えてさしつかえないと思う。・・・矢数道明先生談」
類似する症例
-
【症例45】 66歳、 女性
三年前、右股関節の人工関節置換手術を行い、その後に腰痛及び両下肢外側の神経痛を発症。神経痛は、右>左、ジーンジーンとした痛み。労作時・陰天時・寒冷時に悪化し、入浴後に軽減。はじめは手術した右側だけであったが、右足をかばうように歩くうちに左側も痛むようになった。下肢は触ると氷のように冷たく、わずかに汗で湿潤している。下腿部に浮腫あり。全身的にお元気で、筋肉そのものも軟弱ではない。...もっと見る
-
【症例150】 53歳、 女性
手根管症候群(親指・人差し指・中指の痛み・しびれ)。
左右とも。現在、整形外科にてステロイド局所注射を受けているがはかばかしくなく、解放手術を勧められている。夜間悪化、入浴後改善あり。また手指を酷使すると悪化する。
発症は9か月ほど前、きっかけ不明。
...もっと見る




