月経前の気分の落ち込み・介護疲れ

【症例178】 54歳、 女性
身長160㎝、体重47㎏。体格はやややせ型。
症例キーワード: 02.更年期障害03.婦人科04.精神・神経科
主訴
月経前の気分の落ち込み・介護疲れ
毎月、月経前になるとひどく気分が落ち込む。同時に母親の介護で些細なことでしばしば口論になり、神経をすり減らしている。これらにより、不眠・肩こり・動悸・IBS様下痢など多彩な身体症状にも悩まされている。現在これらの体調不良のため休職中。
全身症状
| 寒熱 | 足の冷え(++)⇒一年中靴下寝+腹巻き |
|---|---|
| 二便 | 大便1日1回、もともと下痢しやすく、最近は精神的刺激で数回/日の下痢を続けることもある(ただし、いつの間にか治っている)。 小便1日10回~(夜1回)。 |
| 飲食 | 食欲少、食量少。飲水平。ストレス時食欲減退。食ムラあり。 |
| 全身 | 疲倦乏力(++)、容易感冒(-)、車暈(+)。 |
| 浮腫 | 下肢に少し。 |
| 睡眠 | 入眠悪し。中途覚醒あり。 |
| 心神 | もともと神経質なほう。 |
| 胃腸 | 食後腹満(+)、げっぷ・おなら多い |
| 月経 | 周期(30~35)、経期(3~5日)、経痛(-)、経血量(少)。 |
| 舌 | 舌質淡・胖大・歯根あり、舌苔微白。 |
| 四肢 | 肩こり(+)。 |
経過・結果
【第1診】
閉経に向けての過渡期であろう。神経症状・介護疲れは肝気鬱結、疏泄失調。身体症状においては下痢・疲倦乏力・舌症などの脾胃虚弱が突出している。これらは肝気鬱結から派生したものであろう。食後腹満・げっぷ・おならは呑気症である。そこで肝気鬱結に対して逍遥散加香附子、肝鬱脾虚に対して柴芍六君子湯を併用する。
処方1)
逍遥散(エキス散)2.5g/4.8g
柴芍六君子湯(エキス散)2.0/6.0g
香附子末0.5g
分2 ×14日
【第2、3診】
漢方薬服用後まず感じたことは胃腸の調子がすこぶる良いこと。食欲ムラなく、安定しておいしく食べられている。下痢もしていない。月経は未来。
処方1) do. 分2×14日×2回
【第4、5、6、7診】
月経あり。いままでのような気分の落ち込みは起こらずに済んでいる。母親との関係性はいまだ微妙であるが、激しい口論を起こさずにすんでいる。肩こり・不眠・動悸も落ち着いている。漢方薬のおかげかもしれない、しばらく続けます、と。
処方1) do. 分2×14日×4回
【第8診】
良好を維持。体調が良いので職場復帰した。
処方1) do. 分2×14日
【第9、10診】
第8診以来4か月ぶりの来局。表情が険しい。目じりが吊り上がっているように見える。
曰く、調子が良かったので漢方薬をやめていた。その後しばらくは良かったが月経前の体調不良をきっかけに一気に悪化、8か月前の状態に戻る。落ち込みとイライラとで、自分で自分の感情がコントロールできないと泣きながら話す。仕事は何とか出来ているが、このままでは再度休職しなければならないかもしれない、と。そこでとりあえず処方1)を再開することにする。
処方1) do. 分2×14日×2回
【第11、12、13、14診】
以前ほど劇的には効いていないが、それでも少しずつは良いようである。月経は3か月来ていない。
処方1) do. 分2×14日×4回
【第15診~】
まあまあ落ち着いている。体感として再発・最悪の状態から50%ほどの回復。日常生活は何とかこなしている。休職せずにすんでいる。そこでこの50%回復を是とし、この後は処方1)の服用を継続し、時間をかけての回復に期待する。
処方1) do. 分2×14日~
考察
本案のポイントは次の二点。
①逍遥散合柴芍六君子湯加香附子について
逍遥散を用いる場合、そのまま用いることはなく、基本形として逍遥散加地黄・香附子として使用している。地黄は四物湯を、香附子は香附子原末を用いている。この加味方は『橘窓書影』に倣ったものである。本案のごとく脾胃虚弱の場合、四物湯を柴芍六君子湯に変えて用いることも多い。逍遥散に柴胡・芍薬はすでに内包されているのだから合六君子湯でもよいと思われるかもしれないが、柴芍六君子湯の方が効果がよいように感じている。
②効果50%で同一処方継続の意味
治療効果が50%だったら100%を目指し、さらに処方改良を加えるべきという考えもあろうかと思う。ただし、処方を変えるということは逆に悪化するリスクも常にある。このような場合、「時間軸」を利用するという考え方がある。「時間軸」を利用するとは、何のことはない「あれこれ処方をいじるより、同一処方を長く服用を継続すれば薬効が浸透し、だんだんと効果が上がってくることも少なからずある。これが結局一番の近道である」という経験則である。
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<病歴>
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