月経前の気分の落ち込み・イライラ(PMS)

【症例177】 37歳、 女性
身長159㎝、体重49㎏。体格は普通くらい。
主訴
月経前の気分の落ち込み・イライラ(PMS)。
ほぼ毎月、月経前1週間くらいから気分の落ち込みとイライラが始まる。月経開始とともに消失。時には月経に関係なくストレス時、陰天時にも起こる。
全身症状
| 寒熱 | 足の冷え(+)、冷えのぼせ(+) |
|---|---|
| 二便 | 大便1~7日/回。排便にむらがある。些細な刺激ですぐ出なくなる。 小便1日3~4回(夜0回)。 |
| 飲食 | 食欲、飲水ともに平。ただしストレス時には食欲がガクンと落ちる。 |
| 全身 | 疲倦乏力(少し)、容易感冒(-)。 |
| 浮腫 | 下肢に少し。 |
| 睡眠 | 良好。 |
| 心神 | 小さい時からもともとこだわりが強く、神経過敏な性格。 |
| 汗 | 平。 |
| 頭 | 頭痛(陰天時)。 |
| 月経 | 周期(28日)、経期(5~7日間)。月経痛(-)、経血量(平)。 |
| 舌 | 舌質微紅、舌苔微白。 |
経過・結果
【第1診】
典型的なPMSであろう。月経周期に一致した気分不良、冷えのぼせ、大便不定などから肝気鬱結・疏泄失調と判断。加味逍遥散を基本に、これに地黄・香附子を加えたいところであるが、エキス剤希望のため加味逍遥散合四物湯加香附子末とする。
処方1)
加味逍遥散(エキス散)3.0g/7.5g
四物湯(エキス散)2.0/6.0g
香附子末0.5g
分2 ×14日
【第2診】
月経は周期的にまだである。便通がよくなり、ほぼ毎日排便あり。肩こり改善。睡眠の質が良くなり朝の目覚めが良い。
処方1) do. ×14日分
【第3診~】
月経あり。気分不良ほぼ起こらず、安定して月経前を過ごせた。こんなにも漢方薬は良く効くものかと驚いている、と。こののちも安定を維持。都合6カ月処方1)を継続。漸減ののち廃薬。
考察
月経前の気分不良に加味逍遥散は好適である。ただし、私自身の経験則であるが、加味逍遥散をそのままの形で用いるより加地黄・香附子としたほうが遥かに効果的である。これは『橘窓書影』の逍遥散を参考にしたものである。著者の浅田宗伯先生は逍遥散を用いるにあたっては必ず加地黄・香附子として用いておられた。つまり、逍遥散の臨床における基本形は最初から「逍遥散加地黄香附子」として使っておられたのである。本案は逍遥散を加味逍遥散にスライドし、地黄を四物湯(地黄・当帰・芍薬・川芎)に置 き換えたものである。
ところで、成書には「加味逍遥散を用いるにあたって、血虚のある場合には四物湯(地黄)を、気鬱の強い場合は香蘇散(香附子)を合方して云々」とある。つまり、状況に応じて必要があれば、そこで初めて合方・加味を施す、と。ただし私はこの立場をとらない。加味逍遥散(逍遥散)と判断した場合、委細かまわず最初から加地黄(四物湯)・香附子として用いている。繰り返しになるが、その方が効果的である。
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