アレルギー性鼻炎と動悸・不眠
【症例42】 46歳、 女性
身長156㎝、体重53㎏
主訴
アレルギー性鼻炎。鼻流清涕、鼻閉、くしゃみ、目痒。
症状はほぼ通年性であるが特に冬に好発。花粉には反応しない。また動悸と不眠のためソラナックス、ベンザリンを使用している。
全身症状
寒熱 | 冷え症で、冬はアンカ使用。冷えのぼせ(-) |
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二便 | 大便1日1行。 小便1日10~行、夜間0行、色(平)、量(少)。 |
飲食 | 食欲(平)、飲水(平) |
全身 | 疲倦乏力(+) |
胸腹 | 胃痛(ストレス性・軽微) |
浮腫 | 下肢(+) |
睡眠 | 不眠傾向 |
心神 | ストレスや坂道・階段で動悸が起こることがある。また動悸が起こるとなんとも落ち着かなくなる。 |
汗 | 平 |
頭 | 頭痛(コメカミ) |
月経 | 周期(約40日)、経期(7日間)、経痛(-)、経血(色平、量少)、帯下(白粘、多)。 |
面 | 色白でぽっちゃりとした面立ち。 |
舌 | 舌質胖・嫩・有歯痕、舌苔微白。 |
嗜好 | 飲酒(-)、煙草(-) |
皮膚 | 色白 |
体型 | 平 |
血圧 | 125~66 |
脈拍 | 54/分 |
経過・結果
第1診アレルギー性鼻炎の直接的な原因は痰飲によるものであるが、同時に頭痛・不眠・心悸などの気上衝を兼ねていると思われる。このような場合、痰飲の治療だけではだめで、両者を同時に治療する必要がある。 処方1)当帰芍薬散(エキス散)3.0g/9.0g+柴胡桂枝乾姜湯(エキス散)2.0g/6.0g 分2×14日分 |
第2診〜服用翌日から下利となる。そこで「食後服用」とするとすぐに回復。 |
考察
アレルギー性鼻炎の原因はさまざまである。最も多いのが痰飲型で、その治療薬のファーストチョイスとして当帰芍薬散を好んで用いている。この場合、男女を問わない。今回の場合は「冷え症」「尿頻数」「下肢浮腫」「ぽっちゃりとした面立ち(茯苓面)」「舌質胖・嫩・有歯痕、舌苔微白」といった症状が痰飲に相当する。気上衝は「心悸及びそれに伴う不安感」「頭痛」「不眠」など。基本に「桂枝証」があるものと思われる。その治療方剤は当然桂枝配合剤であるが、今回は当帰芍薬散と相性抜群の柴胡桂枝乾姜湯を選択した。幸い、この二剤合方で著効を得たが、無効の場合さらに苓桂朮甘湯を合することも多い。当帰芍薬散合柴胡桂枝乾姜湯はもともと苓桂朮甘湯を内包しているわけであるから、痰飲・気上衝への対応を強化したことになる。当帰芍薬散合柴胡桂枝乾姜湯合苓桂朮甘湯は、湯本求真先生の皇漢医学に同様の症例があり、これに倣ったものである。
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