アトピー性皮膚炎
【症例54】 13歳、 女性
身長146㎝、体重31㎏
主訴
小学2年生ごろより発症。好発部位は膝・肘・手首の屈側、前首で、時に眼周囲、口周囲。局面性の発赤で、表面は乾燥し、強い痒みを伴う。浸出液はない。部活動で疲れたときや、屋外で日光を多く浴びた後に悪化する傾向。病院からのワセリン外用と、かゆみが強いときのみジルテック頓服を使用中。アレルギーは他にも喘息及び鼻炎が少しある。
全身症状
寒熱 | 冷え症 |
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二便 | 大便1~2日/行 小便1日6~7行 |
飲食 | 食欲あるが量は少ない。間食(お菓子など)を好む 、飲水:平 |
全身 | とても疲れやすく、朝早起きは苦手。風邪をひきやすい。 |
睡眠 | 良好 |
汗 | 出やすい |
月経 | 初潮まだない |
舌 | 舌質胖大、舌苔微白 |
経過・結果
第1診脾胃虚弱によるアトピーと考え、胃腸を丈夫にするべく補中益気湯、皮膚の炎症を直接抑えるべく消風散と麻杏甘石湯、これらを併用し、更に地竜を痒みの強いときの頓服に用いた。更に砂糖(を含む食品)・果物を禁止するよう指導。 処方1)補中益気湯6g/12g+消風散2g/9g+麻杏甘石湯2g/6g 分2×14日分 |
第2診服用直後より発赤及び痒み改善。2週間で70%ほど消失。地竜は使わず。2か月で略治。その後、症状の前後があり若干処方内容を加減したものの、9か月後、1日1包に漸減。現在も服薬中 |
考察
小児のアトピー性皮膚炎は脾胃虚弱に由来する場合が多く、その際には補中益気湯を用いている。健脾剤は補中益気湯以外にも多数あるが、ことアトピー性皮膚炎に治療においては補中益気湯でなければならない。補中益気湯は黄耆・人参・白朮といった補気薬以外に柴胡・升麻という解毒薬を内包しているからである。脾胃虚弱によるアトピー性皮膚炎を「気虚発熱」の亜型と考えているがどうであろうか。消風散は皮膚炎の標治剤。炎症の強い場合は麻杏甘石湯を併用する。