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症例紹介

頭痛

更年期における頭痛・肩こり・目の奥の痛み

【症例113】 44歳、 男性
身長168cm、体重82㎏。筋肉質~やや肥満。サッカークラブチームのコーチをしている。

症例キーワード: 頭痛

主訴

頭痛。
以下の三つのパターンがある。
① 筋緊張型頭痛(ほぼ毎日)
② 片頭痛(天気が崩れる前、台風、睡眠不足、寝すぎた時などに好発)
③ 群発頭痛?(昨年1~2月の約2か月間、右の目の奥の激痛。今回が初めて。多飲がきっかけか?)
いずれもロキソニンで対応しているがコントロールできたりできなかったり。
母親も片頭痛あり。

全身症状
寒熱 冷え性(−)、冷えのぼせ(+)。
二便 大便:1日/回
小便:8~9/日(夜間1行)、量平、色平。
飲食 食欲:平。
飲水:平。
全身 倦怠無力(−)、容易感冒(−)車暈(歴)
浮腫 なし
睡眠 良好
心神 良好
胃腸 常に胃が重い感じ。多食したりビール(ジョッキ1杯)を飲むと頭痛と悪心を生じ、食事の途中でトイレに行き嘔吐する。それと同時に頭痛も消失。
舌質微紅、舌苔微潤。
皮膚 皮膚は微褐色

経過・結果

【第1診】

三つの頭痛パターンが混在する非常に複雑な頭痛と思われる。頭痛そのものの発症時は悪心嘔吐はないものの、多食・飲酒後の頭痛・嘔吐、そして嘔吐後の頭痛改善などから痰飲上逆が原因の頭痛と考えて治療を行うことにする。痰飲上逆の頭痛には基本として、五苓散と半夏白朮天麻湯と小半夏加茯苓湯を想定している。まず五苓散。本案においてはその目標である「口渇・尿不利」がない。また、本案の嘔吐は五苓散の「水逆」と類似するが基本「水逆」は悪心を伴わない。よって五苓散は否定。次に半夏白朮天麻湯。本方は脾虚を基本とし、これより派生した痰飲に由来する頭痛に用いる。本案患者には脾虚はない。よって否定。小半夏加茯苓湯。本方は使い方が四つある。悪心・嘔吐、浮腫、頭暈、頭痛。基本は悪心・嘔吐で、浮腫、頭暈、頭痛はこれに付随する。本案に合致するものと思われる。そこで、小半夏加茯苓湯を用いることにする。

処方1)小半夏加茯苓湯 12.0/6.0g 分2 14日分

【第2診】

著効あり。「服用翌日より胃がものすごく気持ちよい感じ。頭痛もなく、気分爽快。こんなに気持ちが良いのは久しぶりである。この2週間頭痛発作は起こていない。自分的には奇跡である」と。

処方1)小半夏加茯苓湯 12.0/6.0g 分2 14日分

【第3診】

良好を維持。だだ、経済的理由にて服用を中止することにする、とのこと。

残念ではあるが28日分服用時点で服薬中止。

再発時はすぐ連絡するようにと伝えておく(※)。

 

(※)

中止して5か月になるが再発の連絡はない。

 

 

考察

小半夏加茯苓湯で治る頭痛がある。脾胃痰飲に由来するもので、五苓散・半夏白朮天麻湯との鑑別を要する。
日本において小半夏加茯苓湯を頭痛に用いた例はほとんどない。一方、現代中国の書籍を見るとその例は散見される。
小半夏加茯苓湯を頭痛に用いる際は、その使用量に注意しなければならない。一般に、半夏は少量用いる場合は降逆和胃、大量に用いると止痛安眠の効果を発揮する。少量とは2~4gくらい、大量とは10g以上。本案の小半夏加茯苓湯12.0g中の半夏は10.0g。


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