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症例紹介

妊娠中のなかなか止まらない咳

【症例173】 30歳、 女性
身長160㎝、体重50㎏、子ども一人あり。

症例キーワード: 02.婦人科08.呼吸器科咳・喘息婦人病

主訴

妊娠中のなかなか止まらない咳。
第一子はできにくく、当薬局にて不妊治療を行い、漢方薬を6か月服用ののち妊娠出産に至った。第二子は自然妊娠。妊娠後、安胎薬(当帰芍薬散+補中益気湯+香蘇散)を服用中におきた妊娠咳嗽。妊娠12週目ごろから発症。咳声は「ゼロゼロ・ゴホゴホ」といった痰嗽。喀痰は白色・少量、容易喀出。連発性・難止性。病院にて麦門冬湯とメジコン投与され、服用するも無効。

全身症状
寒熱 冷え性、冬はレッグウォーマー着用して寝ている。
二便 大便:1日1行
小便:1日7~8行、夜間0行。
飲食 食欲:平
飲水:平
婦科 有経時は周期(28日)、経期(5日間)、経血量(平~多)、月経痛(少し)、 器質的病変なし。
全身 疲れやすい。朝が弱い。鉄欠乏性貧血の既往有(髪の毛が乾燥ぎみ、爪は反って、もろい)
浮腫 下肢に少し
睡眠 良好
心神 良好
目・耳・鼻 アレルギー性鼻炎あり。
あざができやすい、ぽっちゃりとした面立ち(いわゆる当帰芍薬散タイプ)
舌質微紅、舌苔白
血圧 90-60

経過・結果

【第1診】

妊娠咳嗽は意外に治りにくい。漢方薬がしばしば有効な手段となる。妊娠咳嗽には、陰虚型に麦門冬湯、痰飲型に参蘇飲を用いている。本案では「ゼロゼロ・ゲホゲホ」といった痰嗽様の咳声、白色・少量、容易喀出の喀痰、舌苔白等から湿痰を認める。さらに麦門冬湯が無効であったことから参蘇飲を選択。平素の安胎薬とは別個に服用してもらう。

処方1)

参蘇飲6.0g/6.0g 分3×7日分

【第2診】

 服用3日にて咳嗽消失。7日分を服用ののち平素の安胎薬として参蘇飲を香蘇散と入れ替えて服用してもらう。

処方2)

当帰芍薬散3.0g/9.0g

補中益気湯4.0g/12.0g

香蘇散2.0g/6.0g    各分2×14日分

【第3診~】

 その後、咳嗽起こらず。安定を維持。

処方2) do.

考察

<考察>
参蘇飲は妊娠中の諸症状に有効であり、かつ安全に使用できる。この安全性が使う側としてはとてもありがたい。その安全性は蘇葉の安胎作用に由来するものと考えている。
参蘇飲の妊娠中の使用目標は
① 妊娠感冒
② 妊娠咳嗽  等である。

妊娠咳嗽について『井見集 付録』に次のようにある。
「巻四 子嗽治験
旧福山藩・塩田氏ノ妻、妊中咳嗽甚シ。加フルニ全身浮腫シ、小便利セズ。先君子乃チ投スルニ参蘇飲加杏仁・桑白皮ヲ以テシ、大効ヲ得タリ。・・・」
「巻九 悪阻治験
吉岡村・小林三次・妻、二十七年也。妊娠六ヶ月、咳シテ吐食・吐水ナリ。頭痛ム。其脈急数。舌上微白。与フルニ二陳湯ヲ以テシ、其吐全ク止ム。而シテ頭痛・咳嗽止マザルニヨリ参蘇飲加杏仁・桑白皮ヲ以テシテ治ス。時ニ、明治三九年六月。」
この医案を読んで以降、妊娠咳嗽の痰飲型に参蘇飲を用いるようになった。この場合、外感は一切関係なく、単に咳止めとしての参蘇飲である。念のため。両案とも加杏仁・桑白皮といった加味を施して妊娠咳嗽に対応している。妊娠咳嗽に対する定形の加味なのかもしれない。『衆方規矩』の参蘇飲の加味方に「初メヨリ咳嗽セバ桑杏ヲ加フ」とある。これによるものか。今回、幸いにして参蘇飲のままで対応できた。無効だった場合、この加味方が必要になったかもしれない。

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