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症例紹介

感冒

【症例6】 72歳、 女性
身長157センチ、体重49キロ。7月11日、来局。

症例キーワード: 自律神経

主訴

 暑い夏のある日、クーラーの強く効いた部屋で半日過ごし、その翌日に発症。発熱(微)、夏なのに背中が寒くて仕方ない、自汗が上半身に顕著にあり、手足の冷えとだるさも強い。
<病歴>
 20代のころ肺結核を患ったことがある。

全身症状
寒熱 平素より手足は冷え性。のぼせることはない。
二便 小便1日7~8行、清長。大便1日1行、ただし下利しやすい。
飲食 飲水は平、食は細いほう。
全身 もともと疲れやすい
舌質微紅、舌苔滑。

経過・結果

第1診

もともとの陽気不足のところに表衛不固を兼ねて起こった感冒と考え、

処方1)桂枝加附子湯、三日分を投与。

桂枝加附子湯
桂皮(ベトナム)4.0、芍薬(酒炙)4.0、大棗4.0、甘草(炙)2.0、乾生姜1.5、附子(白河)1.0

第2診

 三日後来局。ぜんぜん効き目がなく汗が却って多く出るようになったという。そこで一連の症状が気虚およびそれに陽虚を兼ねるものと考え、

処方2)補中益気湯加附子、3日分投与。

補中益気湯加附子
黄耆(蜜炙)4.0、白朮(清炒)4.0、人参(白参)4.0、当帰(酒洗)3.0、柴胡(三島)2.0、大棗2.0、陳皮2.0、甘草(蜜炙)1.5、升麻1.0、乾生姜0.5、附子(白河)1.0。

第3診

 三日後電話あり。曰く、残念ながら薬の効果はなく、とにかくだるくて仕方がないので入院して養生することにしました、と。更に一週間後来局。曰く、退院してきました。熱も平熱になり、激しいだるさもなくなりました。しかし上半身の汗と手足の冷えと背中の寒気が今も残るのでこれが何とかならないでしょうか、と。改めて弁証してみるとこの症例の最大のポイントは虚寒証と自汗との関係であろう。桂枝加附子湯で無効だったということはこの自汗は表の矛盾ではない。また補中益気湯加附子の目標は気虚に重点を置きそれに陽虚を兼ねたものであるから、これが無効ということは気虚が根本にあるものではない。となるとこの自汗は陽気の不足により漏れ出でた汗と考えるべきであろう。そこで

処方3)四逆湯、三日分投与。

四逆湯
甘草(炙)3.0、乾姜(乾生姜)2.0、附子(白河)1.0。

第4診

 翌日電話あり。一服服用したところでぐんぐん背中が気持ちよく温まり汗もぴたりと止みました。今朝は冷えも半分くらいになっています、と。三日分飲み終えた後、元気が出てきたのでもっと飲んでみたいとの申し出により更に一週間分投与し後廃薬。

考察

 第三剤目でようやく治療にこぎつけた症例である。この患者の病理を考えてみると、平素より陽気不足があってそこにクーラーの寒冷が加わり悪寒・発熱、四肢冷、自汗などを引き起こしたものと考えられる。この場合の発熱はおそらく真寒仮熱によるものであろう。そのように考えると、第一剤目に四逆湯を投与していても効果があったのではないだろうかと思う。四逆湯の最も重要な使用目標は方名のごとく「四肢厥逆」すなわち強い四肢の冷えであって、「下利清穀」は必発ではない。この症例以来、高齢者の風邪の初期および治りぞこないには麻黄附子細辛湯、真武湯、五積散、補中益気湯加附子、芍薬甘草附子湯などと同等に四逆湯も汎用するようになった。上記の処方1)桂枝加附子湯と処方3)四逆湯の内容を比べてみると、薬味の上だけで見ると四逆湯は桂枝加附子湯に内包されている。が、結果として効いていない。これは、その分量の差によるところもあるが、桂枝・芍薬・大棗がその効果の妨げになっていたと考えるべきであろう。先の『新古方薬嚢』の四逆湯の解説の続きにこうある「・・・一剤僅に甘草2.0、乾姜1.5、附子0.2の方剤の神効、時に起死回生の効を挙ぐ、偉いもんですね。」と。四逆湯を使う度にまったく同じ事を思う。

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