緊張時の発作的な動悸
【症例40】 49歳、 女性
身長154㎝、体重50㎏
主訴
胸部の痛み(-)。緊張時に発作的に起こり10分ほど続く。発症時には体が震えるような感覚になりオドオドしておちつかなくなり、更には文字が書けない。スプーン爪があり、Hb(8~9)。これは子宮筋腫に由来するものとのこと。現在病院で鉄剤服用中。子宮筋腫は閉経を待ち、積極的治療は行わない。
全身症状
寒熱 | 下肢がやや冷える |
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二便 | 大便1日1行、快便。 小便1日7~8行、夜間1行、色・量ともに平。 |
飲食 | 食欲(平)、飲水(平) |
全身 | 疲れやすい、風邪ひきやすく、乗り物酔いしやすい。 |
心神 | 驚きやすい |
汗 | 平 |
月経 | 周期(28日)、経期(7日間)、経痛(初日に少し)、経血(多量) |
面 | 面色:萎黄 |
舌 | 舌質微紅、舌苔無 |
嗜好 | 飲酒(-)、煙草(-) |
皮膚 | アザができやすい、下肢静脈瘤(+) |
体型 | やせ形 |
血圧 | 112-70 |
経過・結果
第1診鉄欠乏性貧血に由来する心悸と判断。震え感・オドオドなどの神経症状は心悸に由来する二次症状と思われる。処方1)苓桂朮甘湯加牡蠣を用いる。 処方1)苓桂朮甘湯(エキス散)4.0/6.0g+牡蠣末0.7g 分2×14日分 |
第2診処方1)服用後、心悸発作は出なくなった。途中、緊張する場面が数回あったがいずれも発作は出なかった。それ以外にも全身的にも元気になったとのこと。 ただし、あくまで処方1)は鉄欠乏性貧血の症状をコントロールするだけであり、貧血そのものを治すものではないことを説明しておく。 |
考察
「傷寒もしくは吐し、もしくは下したるのち云々」の下したるのちを子宮筋腫による経血過多ととらえる。循環血液の総量の不足による心悸に苓桂朮甘湯は適合する。桂枝甘草湯は気上衝を治し心悸を鎮める。茯苓・白朮は皮下・消化管の水分の吸収を助け、循環血の総量を増やす。また、茯苓自体も定悸作用がある。