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症例紹介

汗が出ず熱中症になりやすい

【症例158】 64歳、 女性
身長150㎝、体重63.3㎏。肥満気味。

症例キーワード: 発汗

主訴

 ここ5年ほど、夏季に汗がほとんど出ず、熱中症になりやすい。過去、2回ほど熱中症を経験している。汗が出ないためか、少し日向に出ただけで体が熱くなり、顔面は紅潮し気分が悪くなる。急ぎクーラーの部屋に入るといったん暑さは落ち着くが、今度は下半身が冷えて寒気がして気分が悪い。曰く「熱いのか寒いのかよくわからない」と。体温は35.5℃前後と低め。
<病歴>
子宮筋腫にて子宮摘出手術(45歳)
腰痛・右股関節痛・両ひざ痛にて病院のリハビリ通院中。
過去、更年期障害にて当帰芍薬散、桂枝茯苓丸服用したが胃障害にて中止。

全身症状
寒熱 冷え性。冬は湯たんぽ使用。夏でも家では厚い靴下をはいている。
二便 大便:1日/回
小便:10~回/日、 夜間1回
飲食 食欲:平
全身 平素より疲れやすい
浮腫 顔面・四肢に好発
睡眠 良好
心神 神経質で気疲れしやすい
無汗傾向
胃腸 胃もたれしやすい。へそ下部位の皮膚が冷たい。
舌質紅、舌苔無    
皮膚 皮膚は白く、浮腫状。肉付きは固く、ぶよぶよとはしていない。下肢静脈瘤あり。
四肢 腰痛、右股関節痛、両ひざ痛

経過・結果

1

無汗と冷えのぼせが混在したものであろうか。本案における無汗は「低体温」に由来すると考えられる。高齢者の低体温のファーストチョイスは五積散である。また実際の症状としても五積散を積極的に支持する症状が以下のとおりである。

①腰冷痛、腰股攣急、上熱下冷(津田玄仙口訣)

②無汗、肌肉浮腫・堅緊などのいわゆる「麻黄体質」

③胃腸の悪さとへそ下部位の冷え

④腹部手術の履歴(細野史郎書作・座談集Ⅲ・五積散についてP382・・・「腹部開腹手術の既往がある人にしばしば五積散の証がみられる」・・・

そこで五積散を用いることにする。

処方1) 五積散3.0/9.0g 分2 ×14日分

【第2診】

変化なし。

再考。下肢静脈瘤に注目。下半身の静脈の流れが悪いと全身の血流改善もうまくゆかないのではと考え、五積散に芎帰調血飲第一加減を併用する。経験則として五積散と芎帰調血飲第一加減の合方はすこぶる相性が良い。

処方2) 五積散3.0/9.0g+芎帰調血飲第一加減3.0/7.5g 分2 ×14日分

【第3、4診】

少し汗が出るようになった。クーラーでの冷えの感じ方も幾分か和らいでいる。

処方2) do. ×28日分×2回

【第5診】

気持ちのいい汗が出るようになった。以前のように日向に出ても苦しくない。また、腰痛・股関節痛なども軽減している。日々の活動量が増えている。とても調子よい。体温は35.7℃前後とのこと。

 

考察

低体温について
ヒトは、暑熱などの温熱刺激を受けると体温が上昇し、ある程度まで上昇すると発汗し、放熱をはじめる。ところがスタート時点の体温が低い(低体温)と温熱刺激を受けても発汗体温まで届かず発汗が始まらない。その間、熱は体内にこもり続け熱中症などの体調不良を引き起こす。つまり、低体温は熱中症の原因となりうる。

五積散と低体温
「高齢者の風邪」に五積散を用いる。また、高齢者の腰痛に八味地黄丸と合わせて用いる。いずれもよく効く。その背景に低体温があるのであろう。五積散は高齢者の低体温のファーストチョイスである。

五積散と芎帰調血飲第一加減
全身性の血流改善のポイントとして、「下半身の血流改善」が重要と考えている。構造的にみると下半身の血流には大きく「門脈系」と「大静脈系」とのに2系列がある。「門脈系」をあたため血流改善をするのが五積散。五積散が胃腸薬としもて有効な理由がここにある。また門脈系が温まれば周囲の器官・組織も温まる(子宮・腰など)。一方、「大静脈系」は芎帰調血飲第一加減である。下肢静脈瘤が確認できればそれに越したことはないが、必須ではない。五積散合芎帰調血飲第一加減は本案のごとく高齢者の低体温に好適である。それ以外にも冷えを背景とする婦人科領域の疾患(月経痛、無排卵、黄体機能不全、不妊)等にも用いられる。有効かつ安全に使える非常に臨床的価値の高い組み合わせである。

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