喘息

【症例166】 40歳、 女性
身長161㎝、体重53㎏。体格普通くらい。子ども一人あり。
症例キーワード: 咳・喘息
主訴
喘息。
呼吸困難、伴咳嗽(痰清~黄、痰嗽)。呼吸困難で始まり、咳嗽ののち喀痰で終わる。緊張時・疲労時・睡眠不足時・陰天前・月経前・飲酒後に発作傾向。
喘息の根本治療を希望。
<服用薬>
クロフェドリン
アンブロキソール
エピナスチン
ムコチンシロップ・セネガシロップ・キョウニン水
ツロブテロールテープ
全身症状
| 寒熱 | 冷え性。冷えのぼせあり。 |
|---|---|
| 二便 | 大便:1日/回。 小便:5~6回/日、夜間1行。 |
| 飲食 | 食欲:平 |
| 婦科 | 周期(27~35日)。経期(6~7日間)。月経痛なし。 |
| 全身 | 倦怠無力なし。 |
| 浮腫 | なし |
| 睡眠 | 良好 |
| 心神 | 良好 |
| 汗 | 上半身に出やすい。 |
| 頭 | 頭痛なし。 |
| 舌 | 舌微紅、舌苔なし。 |
| 皮膚 | 下肢静脈瘤なし。 |
経過・結果
【第1診】
現在、状態は悪く、喘息発作は週2~3回ほどと頻発している。そこで、発作治療剤と喘息根治剤の2種類を用意し様子を見ることにする。
処方1) 小青竜湯4.0g/7.5g
麻杏甘石湯3.0g/6.0g 各分2×14日分×2回・・・発作治療剤
処方2) 小柴胡湯4.0g/7.5g
半夏厚朴湯3.0g/6.0g 各分2×14日分×2回・・・喘息根治剤
【第2診】
喘息頻度変化なし。ただし発作発症後に処方1)を1包服用すると喘息はすぐ収まる。つまり、処方1)は有効であるが、処方2)は無効ということであろう。
処方2)再考。喘息の履歴を再度確認。喘息初発は中学1年生のころ。大学に入学後はいつとはなしに消失。結婚(30歳)してからまた発作が起こるようになったという。第一子出産は32歳時。ひょっとしたら喘息再発は結婚後ではなく出産後ではないかと問うが、そこまでは厳密によく覚えていない、と。初潮は小6。また、上記喘息の誘因のうち、月経前の発症はほぼ必発で程度も重篤という。そこで、血瘀による喘息と考え芎帰調血飲第一加減を配合する。
処方1) do. ×14日分
処方3) 小柴胡湯3.0g/7.5g
半夏厚朴湯2.0g/6.0g
芎帰調血飲第一加減3.0g/6.0g 各分2×14日分
【第3診~】
著効あり。服用当日から発作起こらず。処方1)も服用せずに済んでいる。その後、過労・飲酒・ストレスなどで症状の悪化はあったものの、大きな崩れはなく過ごしている。半年後の現在、処方3)の半分量を継続服用中。
考察
喘息は直接的には、気管支の痙攣、気管支の浮腫、気管支内腔への痰の分泌、などが原因で起こる。これらはいずれも気管支の炎症を引き起こす。そして、炎症と緩解を何度も繰り返すうちに気管支に「胼胝(べんち・たこ)」ができることがある。「胼胝(べんち・たこ)」は血瘀である。当然、血瘀体質の強いものほど形成しやすい。女性の喘息で、通常の治療に抵抗し、初潮・月経・産後などをきっかけに発症するものがこれに相当すると考えられる。
本案においては柴朴湯に芎帰調血飲第一加減を配合することで著効をおさめることができた。それでは芎帰調血飲第一加減の中の何がヒットしたのか? それは「桃仁」である。
桃仁と喘息
桃仁の薬効は『臨床常用中薬手冊』によると以下の5つである。
①破血通経
②祛瘀療傷
③潤腸通便
④瀉肺止咳
⑤排膿消癰
ここで④に注目したい。本書には「上気咳嗽、胸満気喘」に用いるという。当然、血瘀を前提とする咳嗽・気喘と考えるべきであろう。つまり、気管支の血瘀(前出の胼胝など)に桃仁は効果を発揮する。また、同書掲載の駆瘀血薬の中で止咳作用を持つ駆瘀血薬は桃仁の他にない。
桃仁配合の駆瘀血薬は芎帰調血飲第一加減の外にも例えば桂枝茯苓丸、桃核承気湯などあるが、本案においては発症に至った経過から芎帰調血飲第一加減を選択した。




