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症例紹介

月経時の悪心嘔吐

不妊、流産癖

【症例2】 32歳、 女性
独身。身長150cm、体重47kg

症例キーワード: 嘔吐月経

主訴

月経時の腹痛および悪心・嘔吐。
腹痛は月経の1~2日目。下腹全体が痛む。どのように痛むかと詳しく聞いてみても「ただ痛む」としか表現できないという。痛みの程度はほぼ毎月同じ。月経周期28~30日、経期7日間。経血量(平)、血塊(少)。帯下(白粘多)。鎮痛剤を毎月服用している。悪心・嘔吐は月経の始まる2~3日前からひどくなり、月経中はほとんど食欲がなくなるという。臭いをかいだだけでえずいてしまう。発熱は伴わない。空腹になると、吐き気がひどくなるので、少量ずつお菓子を食べてしのいでいる。月経が終わりしばらくするとドカ食いをし、すぐもとの体重に戻る。

全身症状
寒熱 四肢冷なし
二便 正常
飲食 食欲:平素は問題ないが少し食べ過ぎたり疲れたりすると嘔気を生じる。また、仕事のトラブルなどでいやな思いをすると吐き気がしてくる。飲水は正常。
浮腫 眼下臥蚕(++)。
心神 20歳台の頃、ストレスにより月経が半年ほど止まったことがある。見た目はさほどでもないが、本人曰く非常に神経質なほうで、それを人に悟られるのがいやでわざとズボラなそぶりをしているとのこと。
舌質淡、胖大。舌苔無し。

経過・結果

第1診

 平素の性格やストレスに感受しやすいことから肝気鬱結はかなりあるものと思われる。また、食欲不振を起こしやすいことと眼下臥蚕と舌診より脾虚痰濁、そしてこれがストレスとの因果関係をもっていることから単純性のものではなく肝気鬱結から派生したものと思われる。また、月経痛は、症状から血瘀・血虚・血寒によるものとは考えにくく、過去にストレス性の経閉を起こしていることから肝気鬱結が衝任脈の気機に影響を与えたものと考えられる。疏肝解鬱、和胃降逆、疎通衝任を行うべく

処方1)逍遙散合六君子湯を投与。

逍遙散合六君子湯
当帰(酒洗)3.0、芍薬(酒炙)3.0、柴胡(三島)3.0、白朮(清炒)、茯苓(朝鮮)3.0、乾生姜1.0、甘草(炙)1.5、薄荷(後下)1.0、人参(白参)4.0、半夏4.0、陳皮2.0

第2診

 吐き気がひどく、全く飲めないという。冷飲や食後服用や生姜の絞り汁を入れて飲む工夫をしてもらったが全く受け付けないという。本人が月経中は飲みたくないというのでその間服薬休止。月経終了後、新たに薬を作り直すことにした。そこでなぜ経前嘔吐をとめられなかったか逍遙散合六君子湯を検証してみた。この患者は脾虚痰濁による悪心嘔吐であろうから六君子湯は問題ないと考えられる。だとすれば逍遙散中の何かが胃に障ったと考えるべきである。恐らく当帰あるいは芍薬あたりではないかと思われる。脾虚痰濁を考えると六君子湯を用いるべきであるが六君子湯単独では疏肝作用はない。そこで、疏肝作用があり、かつ止嘔作用があり治経痛作用のある薬物は何かないかと検討した結果、香附子が最適であろうという結論に至った。六君子湯に香附子を加味した処方で考えた結果香砂六君子湯とすることにした。

処方2)香砂六君子湯14日分投与。

香砂六君子湯
人参(白参)3.0、白朮(清炒)3.0、茯苓(朝鮮)3.0、半夏3.0、陳皮2.0、香附子(酢制)2.0、大棗1.5、乾生姜1.0、甘草(炙)1.5、縮砂1.0、木香1.0

第3診

 今回は飲み易く、胸の辺りもすっきりするという。

更に処方2)14日分投与。

第4診

 今回は悪心嘔吐することなく月経を迎えられた。ただし、月経痛は同様にしてあり、やはり鎮痛剤を服用しなければならなかった。ただ、本人は月経中も普通に食事が出来て非常に喜んでくれている。更に28日分投与。

第5診

 今回の月経は先月同様に悪心嘔吐がなく、更に月経痛も軽く鎮痛薬を飲まずに過ごせた。その後、同一処方を二ヶ月ほど服用した後、服用に簡便な六君子湯と香蘇散の錠剤に切り替え、少量ずつを服薬中である。

考察

 香砂六君子湯には六君子湯に木香・縮砂を加えたもの、香附子・木香・縮砂を加えたもの、木香・香附子・藿香・縮砂を加えたものなどあるが今回は六君子湯に木香・香附子・縮砂を加えたものを用いた。今回の医案は経痛と経行嘔吐とが重なりやや複雑な構造を呈していたが、止嘔と止痛とを兼ねた香附子を用いることでうまく対応できた。

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