月経不順と手指の湿疹
【症例65】 30歳、 女性
身長162㎝、体重67㎏。小太り。
主訴
月経不順:初潮(12歳)のころから不順。年に3から5回くらい。
直近ではH26.1月、5月、8月~現在(H27.1月)まで未来。数年前ホルモン療法をやり、直後は毎月あったものの次第に元に戻った。器質病変なし。
手指の湿疹:左右の小指・薬指の手掌側。関節部のひび割れ・ごわごわ・色素沈着・かゆみ・手掌のほてり。冬季ならび卵・牛乳で悪化。7~8年ほど前に発症。原因不明。口唇ならび他部位の皮膚は正常。
<病歴>
喘息・アトピー・腎盂腎炎の病歴あり。
全身症状
寒熱 | 畏寒なし。手先足先は冷え症だが手掌はほてる。冷えのぼせあり。 |
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二便 | 大便2日1行 小便1日4~6行(夜0行) |
飲食 | 食欲:平 飲水:平 |
全身 | 平 |
胸腹 | 胃腸は良好 |
浮腫 | なし |
睡眠 | 不眠傾向 |
汗 | 平 |
口 | 扁桃腺肥大あり(このため小さいころはしょっちゅう発熱していた) |
頭 | 頭痛あり(ロキソニン使用、肩こりとリンク) |
月経 | 周期(不定)、経期(4~5日。中断することしばしば)、経痛(下腹痛、強い)伴 頭痛・めまい・腰痛・吐き気・発熱。 |
舌 | 舌質赤紫、舌苔微白、舌尖瘀点多数。 |
四肢 | 肩こり(+、とても硬い、頚項強) |
経過・結果
第1診子宮に血瘀があり、これによる月経不順と手指の湿疹と判断。ただし、「月経周期の異常」は血瘀に先立つ「気の乱れ(気滞)」を合わせて考えるのが定石で、多くの場合柴胡剤を配合する。今回の場合、月経時の「嘔して発熱」・頭痛、扁桃肥大、喘息歴、頚項強から小柴胡湯を選択。また、肌肉状態および他皮膚症状から温経湯を否定。 処方1)小柴胡湯(エキス散)5/7.5g+桂枝茯苓丸(エキス散)3/6g 分2×7日分 |
第2診服用2日後電話あり。「服薬後、体がだるくてしょうがない。たぶん薬の影響と思うが大丈夫か?」との問い合わせ。「一過性の反応だからすぐ慣れて感じなくなる。このまま服用を続けてください」と返答。 処方1) do.×7日分 |
第3診7日後。だるさは同程度。手湿疹はさらによくなる。 処方1) do.×7日分 |
第4診7日後。来経(ほぼ半年ぶり)。経痛(+、↓)、経血量(多)、暗赤色、悪臭有、血塊(大・多)。この後も処方1)を継続服用し3月・4月・5月ともに周期的に月経あり。半年の服用ののち廃薬。 |
考察
月経不順と手掌湿疹とがセットで来ると「すわ温経湯」と考えてしまいがちである。この症例の場合、扁桃炎や月経時の発熱、喘息、冷えのぼせなどから基本に柴胡体質を持つと考えられ、更に症状から小柴胡湯を選択した。温経湯はその基本に桂枝体質を持つと考えられ、それには該当しないと判断し、温経湯は否定した。手掌湿疹は扁桃炎の病巣感染によるものかもしれない。
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