右膝痛
【症例89】 78歳、 男性
身長160cm、体重62㎏
主訴
右膝痛。
農作業中に右膝が痛くなり、その翌日来局。農作業自体はごく軽いもので、今まで通りの作業量だった。右膝内側に圧痛・運動痛があり正座ができない状態で、右足をひきずって歩いている。患部に熱感はなく、むしろ冷えている。自発痛・腫れもない。
<現病・病歴>
ぎっくり腰をし、以来慢性的に腰痛あり。めまい。
全身症状
寒熱 | 下肢は冷える |
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二便 | 大便1日1行。軟便傾向。 小便1日3~4行、夜間3行。 |
飲食 | 良好。 |
全身 | 良好。 |
浮腫 | なし。 |
睡眠 | 良好。 |
心神 | 良好。 |
汗 | 上半身に出やすい。 |
胃腸 | 良好。 |
面 | 面色白。 |
舌 | 舌質微紅、舌苔微黄。 |
体型 | 痩せているが引き締まっている。若いころは肉体労働をしていた。 |
血圧 | 137~70 |
経過・結果
【第1診】 農作業による負荷は軽微なもので、特に問題にはならない。むしろ、年齢・患部熱感なく逆に冷えていること・腫れのないことなどから腎虚による膝痛と判断するべきであろう。慢性腰痛・夜間排尿(3回)も腎虚を肯定する材料になる。そこで、腎虚を補うべく独活寄生湯を用いる。ただ、膝痛の治し方にはコツがある。膝は構造的に血流が悪くなりやすく、薬剤が届きにくい。そのため、膝の血流を改善する薬剤が必要になる。これには芎帰調血飲第一加減が特異的に効果を発揮する。この両者を併用する。 処方1)独活寄生湯4.0/6.0g+芎帰調血飲第一加減5.0/7.5g 分2×7日分 【第2診】 著効あり。服用1週間でほぼ完治。正座もできる。 処方1) do. ×7日分 【第3診~】 良好を維持。状況をよく説明し、加齢によるひざ痛は時間が必要で、今は調子よくてもやめればすぐ元に戻る恐れがあり、本格的な膝機能の回復には最低3ヵ月くらいの服用が必要と説明。納得いただき、その後もきちんと服用、都合2.5ヵ月で廃薬。 |
考察
下半身の血瘀治療に芎帰調血飲第一加減を好んで用いている。静脈瘤の根本治療に単独で用い、その炎症時に麻杏甘石湯を併用し、関節痛には防己黄耆湯、麻杏甘石湯、麻杏薏甘湯、疎経活血湯、独活寄生湯と併用して、さらには高齢者の痛風に大黄牡丹皮湯(腸癰湯)と併用、高齢者の痔核に乙字湯と併用してよい結果を収めている。
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