不妊
【症例88】 41歳、 女性
身長156cm、体重52㎏。
症例キーワード: 不妊
主訴
不妊。
2年前、卵巣腫瘍・子宮筋腫の開腹手術。この際、片方の卵巣・卵管と子宮筋腫を摘出。その後ずっとディナゲスト服用していたが、挙児希望にて不妊治療を始め、ディナゲスト中止し、新たにカバサール、クロミットを服用している。AMH(0.14、年齢基準値は1.4)。現在、月経周期28日、経痛(+)、経血量(少)。基礎体温表は二相性(+)、高温期36.7×8日、ただし途中ジグザグで安定しない。また排卵時に頭痛・嘔気あり。
全身症状
寒熱 | 冷え性 |
---|---|
二便 | 大便1日1行。 小便1日4~5行、夜間1行。 |
飲食 | 平。 |
全身 | 疲れやすい |
浮腫 | なし。 |
睡眠 | 良好。 |
心神 | 良好。 |
汗 | 平。 |
頭 | 偏頭痛あり。 |
月経 | 周期(28日)、経期(5日間)、経痛(+)、経血(量少)、血塊(−)。 |
舌 | 舌質淡・嫩、舌苔微白。 |
皮膚 | 皮膚は白いがガサガサした感じ。顔は暗赤色に上気している。 |
体型 | 痩せているが、ひきしまった感じ。 |
血圧 | 120~85 |
経過・結果
【第1診】 月経周期が28日で安定し、基礎体温表が二相性を示し、高温期h36.7×8日から排卵はあるものと思われる。ただ、卵巣嚢腫並びに子宮筋腫の病歴から素体に血瘀があるものと思われる。そこでその血瘀を除くべく芎帰調血飲第一加減を用いることにする。 処方1)芎帰調血飲第一加減(エキス散)5.0/7.5g 分2×14日分 【第2、3、4診】 体が軽くなった感じで、疲れにくくなった。片頭痛、排卵時の頭痛は変わらず。 処方1)do. ×14日分×3回 【第5、6、7、8診】 28日目に月経あり。経血量(→)、経痛(→)、血塊(↓)。高温期のジグザグは改善なく安定しない。そこで高温期のジグザグを「往来寒熱」ととらえ小柴胡湯類が必要と判断。更に片頭痛および痩せて暗紅色に上気した顔から桂枝の気上衝も併存すると考え柴胡桂枝湯とし、これを芎帰調血飲第一加減に合わせて用いることにする。 処方2)芎帰調血飲第一加減(エキス散)5.0/7.5g+柴胡桂枝湯(エキス散)3.0/6.0g 分2×14日分×4回 【第6診】 片頭痛及び排卵時の頭痛は起こらなくなった。基礎体温表の高温期のジグザグは上下幅が小さくなった。ご本人から「体調も良くなった。ただ年齢を考えて体外受精をすることにした。」とのこと。漢方薬はこのまま併用することにする。 処方2)do. ×21日分 【第7診】 体外受精成功せり。以後は安胎のため紫蘇和気飲とする。 処方3)紫蘇和気飲25.0/25.0(煎じ薬)×14日分 紫蘇和気飲 蘇葉2.0、香附子4.0、陳皮3.0、大腹皮1.0、乾生姜1.0、大棗3.0、甘草1.0、当帰3.0、川芎3.0、芍薬4.0(10味、25.0g) 【第8診】 つわりで処方3)は全く飲めず。そこで当帰芍薬散(錠剤)に変更し、飲める範囲での服用とする。 処方4)当帰芍薬散(OTC錠剤)×適量 【第9診~】 出産の報告あり。女児、2110gなり。産後ケアのため芎帰調血飲第一加減を服用。 処方5)芎帰調血飲第一加減(OTC錠剤)×適量×100日 |
考察
最終的に、体外受精を行っているので漢方薬がどれほど妊娠に寄与できたかはわからない。漢方薬なしでも妊娠できたかもしれない。しかし何はともあれ結果が出たのはとてもうれしいものである。
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