ジンマシン
【症例111】 30歳、 女性
身長156cm、体重45㎏。体格中等。
主訴
蕁麻疹。
〇発症は1年ほど前から。きっかけは不明。
〇程度の差はあるがほぼ毎日、夕方ごろ、顔面のみに発症。
〇強いかゆみを伴う淡紅色の小局面(1~3cm×2~3個)として発症。手で触ったり、髪の毛・服・降灰が触れたりすると一層ひどくなる。
〇痒くなるとかゆみ止め軟膏(時に内服)を塗って凌いでいる。
〇これとは別件であるが、夕方になるとふらふらして「血の気が引く感じがして」気分が悪くなる。
〇病院の血液検査では異常を認めない。かゆみを止めるだけの対症療法に限界を感じ、漢方薬で根本療法が出来ないかと来局。
全身症状
寒熱 | 冷え性で、特に足首の冷えが強い。冷えのぼせ(−) |
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二便 | 大便:3日/回。便は硬い 小便:5~6/日、量平、色微黄~黄。 |
飲食 | 食欲:平。 飲水:平。 |
全身 | 倦怠無力(+)、容易感冒(−)車暈(−) |
浮腫 | 下肢に少し |
睡眠 | 良好 |
心神 | 良好 |
汗 | 緊張で手足汗出。 |
頭 | 頭痛(+)、片頭痛+筋緊張型頭痛、イブ10回/月。 |
胃腸 | 胃痛(−) |
目・耳・鼻 | 蓄膿歴(13~14歳のころ) |
月経 | 周期(28~32日)、経期(5~7日)、経痛(開始1日目にあり。鎮痛剤使用)、経血(色:暗紅、量:少)、血塊(小・多)。 |
舌 | 舌質微赤紫、舌苔微白、舌尖部に瘀点あり。 |
皮膚 | 皮膚は白い。顔面はわずかに紅潮 |
四肢 | 左右とも強い肩こり |
経過・結果
【第1診】 月経の状態、舌診、皮膚などから、血瘀の存在は間違いない。また顕著な頭痛は血瘀上衝によるものと考えられる。蕁麻疹が顔面に限局的であることからこれも血瘀上衝の亜型と考えてよいと思う。夕方気分が悪くなるのも同様。 以上より、血瘀上衝に由来する蕁麻疹と判断し、便秘を兼ねることから桃核承気湯を選択。 処方1)OTC桃核承気湯(標準処方の2/3量) ×2/3×21日 【第2診】 3週間後。便通は2/3量で良好。蕁麻疹は服用翌日から一切出ず。頭痛の頻度も激減。イブの使用量が1/4ほどに減少。夕方の気分の悪さも起こらない。 処方1) do. 【第3診】 良好を維持。半年ほどの継続服用を勧める。 処方1) do. |
考察
桃核承気湯証のほぼ典型例。ポイントは、本案蕁麻疹を「血瘀上衝」によるものと類推できるか否かであろうか。
「血瘀上衝」とは子宮血瘀が基本にあり、このため心臓以上の部位に起こる様々な特徴的症状を言う。(「症状と原因とが部位的に離れている」という考え)。
特徴的症状とは…頭痛、めまい、耳鳴り、目赤、鼻血、歯痛、咳嗽・喘息、肩こり、動悸、精神不安など。
処方的には桂枝配合の駆瘀血剤を用い、桂枝茯苓丸、桃核承気湯がその代表。両者の鑑別は便秘の有無が基本であるが、一般に血瘀上衝の程度が強い時ほど便秘もまた強い。また、症状によっては「桂枝茯苓丸+桃核承気湯」もありうる。
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