子供の便秘
【症例119】 4歳、 男性
身長100cm、体重16.5㎏、色白、痩せて、小さいほう。
症例キーワード: 便秘
主訴
便秘。3歳くらいから。1~2回/週の排便。一週間出ないと浣腸して出している。便は太く長い。時々肛門が切れて出血して痛いと泣く。
鼻炎少しあり。喘息(−)、AD(−)。
全身症状
二便 | 大便:1~2行/週 小便:5~6行/日 |
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飲食 | 食欲:良好 飲水:平 |
全身 | 疲労倦怠(−)、風邪をきやすい(鼻水で始まり、咳が最後まで残る) |
浮腫 | なし |
睡眠 | 良好 |
心神 | カンが強い |
汗 | かきやすい |
頭 | 頭痛(−) |
胃腸 | 胃脘痛(−)、嘔吐(−)。 |
経過・結果
【第1診】 これといった特徴がない便秘である。色白でやせている、風邪をひきやすい、汗が出やすい、などから「桂枝体質」が基本にあるものと考え小建中湯を用いることにする。 処方1)小建中湯4.5/27g 分2 14日分 【第2診】 無効。そこでカンが強いことから柴胡桂枝湯にする。 処方2)柴胡桂枝湯2/6g 分2 14日分 【第3診】 良好。排便2~3/週。 処方2) do. 28日分 【第4診~】 良好を維持。排便4~7回/週。この後は排便状況を見て服薬量を調節して服用する予定。 |
考察
子供の便秘には基本的に大黄は用いない。大人の便秘とはその構造が異なるのであろう。小児便秘に汎用する処方は小建中湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯の三つである。
体質的には小建中湯は桂枝体質、柴胡桂枝湯は桂枝体質と柴胡体質の混合型、小柴胡湯は柴胡体質である。
<参考>
『漢方診療レッスン』花輪寿彦
「小柴胡湯で便秘が治ることがある。原典の『傷寒論』に津液のバランスの是正を図ることによって病気が治るという記載がある。特に小児の便秘は大黄を使うことがまずない。一般には柴胡剤、虚弱児には小建中湯を考慮。」
「小柴胡湯と柴胡桂枝湯の鑑別を強いて区別すれば以下の如くである
汎用年齢 顔色 腹証 臨床症状
小柴胡湯 幼児期 青白い 季肋部の膨隆 呼吸器症状を主とし消化器症状を伴うもの
柴胡桂枝湯 学童期 赤い 腹直筋の緊張 小柴胡湯よりも関節痛、腹痛、発疹、中枢神経症状に、よりウエイトが高いもの 」