二人目不妊 第一子帝王切開後の化膿あり
【症例138】 27歳、 女性
やせ型
症例キーワード: 不妊
主訴
二人目不妊。
一人目は自然妊娠にて簡単に妊娠できた。ただし帝王切開で、この時の傷口が化膿ししばらく痛みが続いた。現在は治癒。
月経周期は28~42日ほど。基礎体温表は二相に分離するも高温期が短く、36.7℃を超える日が5日ほど。
全身症状
寒熱 | 冷え性が強く、冬は靴下2枚履きで布団に入る。冷えのぼせあり。 |
---|---|
二便 | 大便:1日1回、普通便。 小便:1日6~7回(夜間排尿なし) |
飲食 | 食欲:平 飲水:平 |
全身 | 平素から疲れやすい |
浮腫 | なし |
睡眠 | 良好 |
心神 | 良好 |
汗 | 普通 |
頭 | 頭痛なし |
胃腸 | 良好 |
月経 | 月経周期(28~42日)、期間(5日間)、経血量(普通)、経痛(なし) 黄帯下(月経前に増加。出産後に発症) |
舌 | 舌質:淡 舌苔:無 舌尖に瘀点あり |
皮膚 | 高校から現在もシモヤケが足ゆび10本にできる。 |
体型 | やせ型 |
血圧 | 90~40 |
経過・結果
【第1診】二人目不妊には必ず「血瘀」が関与している。さらに本案においては帝王切開後の化膿の履歴がある。現在腹痛などの症状は消失しているものの「微細な子宮の細菌感染が残存していて、これが妊娠を阻害している可能性もある(出産後から黄帯下あり)。また、「冷え性」が強く、シモヤケが特徴的で、冷えのぼせなどを考慮すると適宜桂枝類方が必要と思われる。 血瘀に芎帰調血飲第一加減、微細な子宮の細菌感染に竜胆瀉肝湯、冷え性に当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いることにする。 処方1)芎帰調血飲第一加減、(2.5/7.5g)+竜胆瀉肝湯(3.0/9.0g)+当帰四逆加呉茱萸生姜湯(3.0/9.0g) 分2 14日分 【第2診】服用後、手足の温感が上がる。朝の元気も出てきた。 処方1)do. ×14日分 【第3診】月経あり。50日目。6日間。経血(以前は淡紅色だったが今回はきれいな赤色)。 基礎体温表は自然排卵あり。高温期は超36.7℃×7日間。黄帯下減少。元気が出てきて体調良好。 処方1)do. ×28日分 【第4診】自然妊娠したとの連絡あり。 妊娠中は安胎薬(流産予防薬)に変更 処方2)当帰芍薬散(4.5/9.0g) 分2 ~ |
考察
2か月ほどの漢方服用で妊娠成功に至った例である。
二人目不妊は非常に多い。その原因は上記の通り第一子妊娠出産時に発生した「血瘀」が第一に考えられる。また状況によっては「子宮の微細な感染」も考慮しなければならない場合がある。その感染機会として帝王切開、カンジタやクラミジアの感染・治療後、子宮内膜の掻爬・吸引後、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮ポリープの外科的手術のあとなどがある。現代医学的には「慢性子宮内膜炎」といったところであろうか。その症状として黄帯下・腹痛があげられるが、実際には無症状のことも多く見過ごされやすい。二人目不妊で「血瘀」+「微細な子宮感染」の構造を持つ不妊治療に芎帰調血飲第一加減合竜胆瀉肝湯は非常に良い組み合わせとなる。
不妊治療の病理構造として一般に「血虚」「血瘀」「気滞」「気虚」「腎虚」等が挙げられる。これらを治すべくあれこれやっても結果の出ない場合、その不妊治療のストーリーを確認し場合によっては「微細な子宮感染」を考えてもよいのではないだろうか。
類似する症例
-
【症例9】 28歳、 女性
不妊、流産癖。
H10.7月に1ヶ月目で、H11.9月に2ヶ月目でそれぞれ流産している。「妊娠を安定させ、無事出産できるような漢方薬がほしい」と二回目の流産の翌日に来局。現在まだ少量の子宮出血が続いている。...もっと見る -
二人目不妊 3回目の体外受精の予定 その前に着床環境を整えたい
【症例135】 40歳、 女性
二人目不妊。
すでに2回体外受精に失敗している。漢方薬で着床環境を整えてから3回目の体外受精に臨みたい。
卵子はすでに採卵済み。体外受精は2か月後の予定。
子宮内膜は8~9mmほど。高プロラクチン血症・クラミジアの履歴あり。
基礎体温表は二相に分離していて自然排卵あり。
高温期も十分な体温あり。ただ低温期が36.5℃前後とやや高...もっと見る