3年前に稽留流産
【症例28】 35歳、 女性
身長160cm、体重51kg
症例キーワード: 不妊
主訴
3年前に稽留流産。基礎体温は二相に分離していた。今は計っていない。現在、産婦人科にてゴナドトロピン療法および排卵以降に黄体ホルモン剤(デュファストン)服用中。子宮内膜症(-)、子宮筋腫(-)、PCOS(-)。
全身症状
寒熱 | 手足の冷え(++)、悪風(寒がり)。冷えのぼせ(+) |
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二便 | 大便:1日1回。 小便:1日5~6行。色・量ともに平。 |
飲食 | 平 |
全身 | 疲れやすい |
浮腫 | なし |
月経 | 周期(26~28日)、経期(6日)、経痛(下腹、腰)、血塊(10mm×数個) |
舌 | 舌質淡、歯痕あり |
皮膚 | 皮下出血(+)、唇・手指のひび割れ(+) |
血圧 | 104-72 |
脈拍 | 77/分 |
経過・結果
第1~4診冷えのぼせ、月経状態、皮下出血などから、「血瘀」が考えられる。流産が大きく影響しているものと思われる。また唇・指先のひび割れといった「乾燥を伴う虚寒性血瘀」の症状も見受けられる。「流産後血瘀」には芎帰調血飲第一加減を、「乾燥を伴う虚寒性血瘀」には温経湯を用いるところであるが、まずは芎帰調血飲第一加減を中心に流産により生じた血瘀を十分に取り除き、その後温経湯を用いることとする。 処方1)芎帰調血飲第一加減(エキス散)5.0g/7.5g+五積散(エキス散)4.5g/9.0g 分2 14日分×4回 処方2)プラセンタエキス |
第5~6診処方1)2)服用2ヶ月ほどで手足のひえ、肩こり、経痛・血塊などが減少し、疲れにくくなってきた。そこで処方1)を処方3)温経湯に変更。 処方2) do. 処方3)温経湯(エキス散)12.0g/12.0g 分2 14日分×2回 |
第7診処方2)3)を服用3週間後、妊娠確認。妊娠確認後は16週間処方2)4)芎帰膠艾湯(煎じ薬)を服用し、その後処方2)5)紫蘇和気飲(煎じ薬)に変更、以後も妊娠中継続服用。⇒無事出産、安産なり。 芎帰膠艾湯 紫蘇和気飲 |
考察
流産後、再度妊娠しないものは基本的に血瘀と考える。芎帰調血飲第一加減を第一選択肢とする。更にこの症例においては、悪風を伴う冷え性が顕著にあるので麻黄を含む助陽剤として五積散を併用した。2か月ほど服用し基本体質が整ったところで温経湯に変更。温経湯は口唇・手掌の乾燥を伴う虚寒性血瘀に特異的効果がある。処方4)5)はいずれも安胎薬として用いた。
今回は処方1)と処方3)とは服用時期をずらして使用したが、最初からまとめて芎帰調血飲第一加減+五積散+温経湯として用いたらどうであっただろうか。
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