病院にて高プロラクチン血症と診断
【症例29】 37歳、 女性
身長155cm、体重51㎏、引き締まった感じ
症例キーワード: 不妊
主訴
病院にて高プロラクチン血症と診断されている。現在クロミット服用中。クロミット服用以前は基礎体温表が二層に分かれたり分かれなかったりと安定した排卵がなかった。現在、基礎体温表は二層に分かれるものの排卵後、高温層に移行するまで四日ほどかかる。また高温層の温度自体も36.5~7で十分に上がりきらない状態。
全身症状
寒熱 | 冷え性(++)。同時に手のひら・足の裏は非常にほてり、かかと・唇のひび割れがある。冷えのぼせ(+)、お風呂でものぼせやすい。 |
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二便 | 大便1日1行 小便1日5~6行、夜間0行、色(清長) |
飲食 | 食欲(平)、飲水(平) |
浮腫 | なし |
睡眠 | 良好 |
心神 | 良好 |
汗 | 平 |
口 | 平 |
頭 | 肩こり⇒頭痛 |
月経 | 周期(35~42日)、経期(7日)、経痛(月経2日目、下腹部、鎮痛薬(-)カイロを下腹に当てると軽減)、経血(平)、血塊(20mm×数個)、子宮筋腫(-)、内膜症(-) |
舌 | 舌質淡・有歯痕、舌苔白 |
皮膚 | 色白、皮下出血(+) |
体型 | 中肉 |
血圧 | 119-77 |
経過・結果
第1~10診月経の状態から「血瘀」が、基礎体温の状況から「虚寒」が読み取れる。これらが不妊の原因と思われる。しかも、この血瘀は手のひら・足の裏のほてり・かかと・唇のひび割れといった「乾燥を伴う血瘀」である。そこで、処方1)温経湯を用いることとする。さらに「虚寒」に対しては、高温期を強力に温めるために処方2)当帰シロップ剤を併用することとする。 処方1)温経湯(エキス散)12.0g/12.0g 分2×14日分×10回 処方2)当帰シロップ 適量 |
第11診処方1)2)服用5か月弱にして妊娠成功。妊娠確認後16週間は処方2)3)芎帰膠艾湯を、その後は出産まで処方2)4)当帰芍薬散を服用。⇒無事出産。安産なり。 処方3)芎帰膠艾湯(エキス散)15.0g/15.0g 分2 処方4)当帰芍薬散(エキス散)9.0g/9.0g 分2 |
考察
基礎体温表からおそらくは黄体機能不全かあるのではないかと思う。黄体機能不全の選択肢として温経湯がある。ただ、あくまで選択肢のひとつであってすべての黄体機能不全が温経湯で治せるわけではない。温経湯証を持つものの黄体機能不全が大前提である。念のため。
温経湯証は、その最も基本に「桂枝体質」がある。その「桂枝体質」に「血瘀」と「虚寒」と「特徴的乾燥」とが加わって温経湯証を形成している。その「桂枝体質」とは、一般にやせ形で、その皮膚の色白く、四肢筋肉は引き締まっていて、汗ばみやすく、浮腫はなく、平素からのぼせやすく、痛症(頭痛、腹痛、四肢痛)を超しやすい、寒冷に敏感、舌苔暗紅、などの特徴を持つ体質を言う。この症例においては「引き締まった感じ」「冷えのぼせ(+)、お風呂でものぼせやすい」「浮腫:なし」「頭項:肩こり⇒頭痛」「経痛」「色白」などから総合的に「桂枝体質」と判断した。
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