産婦人科の検査では器質的異常はないとのこと。黄体の機能が弱いことが考えられる。
【症例31】 28歳、 女性
身長156センチ、体重44キロ
症例キーワード: 不妊
主訴
結婚2年。産婦人科の検査では器質的異常はないとのこと。基礎体温表は二層に別れ、月経開始14日目前後に体温陥落日があり二相に分かれることなどから排卵はあるものと考えられる(現在産婦人科にてクロミット内服およびHCG注射を受けている)。ただ、排卵後高温期への移行に4~5日かかり、結果高温期が短い。これらのことから黄体の機能が弱いことが考えられる。
<併用薬>
クロミット
HCG(注射)
ロキソニン
全身症状
寒熱 | 手足は冷え性。冬は靴下寝。冷えのぼせ(+) |
---|---|
二便 | 大便1日1行。 小便1日6~7行、夜間1行、色平・量平 |
飲食 | 食欲(平)、飲水(熱飲を好む) |
胸腹 | 平 |
浮腫 | なし |
睡眠 | 平 |
心神 | 平 |
汗 | 平 |
口 | 慢性扁桃腺肥大あり |
目・耳・鼻 | 平 |
月経 | 周期(28~30日)、経期(7日)、経痛(腰・下腹、月経開始1~2日目、痛みの程度は強くロキソニン使用、寒冷時増悪傾向)、経血(暗赤色)、血塊(10mm×2~3個) |
面 | 面色萎黄 |
舌 | 舌質胖大、舌苔微白 |
皮膚 | 平 |
体型 | やや痩せ型 |
四肢 | 平 |
血圧 | 116-72 |
脈拍 | 58/分 |
経過・結果
第1診冷え性、脈遅から「虚寒」が考えられる。また、強い経痛、暗赤色の経血、血塊などから「血瘀」が考えられる。多くの場合、「虚寒」と「血瘀」とは独立して存在することはなく、互いに影響しあって病態を形成している。よって本件の主たる病変は「虚寒+血瘀」であり、不妊はこれに由来するものと考えられる。 そこで処方1)芎帰調血飲第一加減+五積散を用いる。 処方1)芎帰調血飲第一加減(エキス散)5.0g/7.5g+五積散(エキス散)6.0g/9.0g 分2×28日分 |
第2診元気がついてきた感じがある、冷えは感覚的には減少してきたが実際の体温表では高温期の弱さはあまり改善がない、とのこと。このまま様子を見ることにし処方1)を更に4ヶ月継続服用したが妊娠にいたらず。冬に入り、四肢冷(↑)、経痛(↑、カイロをあてると軽減)となる。このことから、上記処方では冷えに十分対処できていなかったものと判断し、処方2)五積散+当帰四逆加呉茱萸生姜湯に変更。 処方2)五積散(エキス散)6.0g/9.0g+当帰四逆加呉茱萸生姜湯(エキス散)6.0g/9.0g 分2×14日分 |
第3診処方2)に変えてから「手足の冷えが俄然よくなった、おなかが温まる感じがする」とのこと。処方2)に変更後、1ヵ月後に妊娠成功。 |
考察
五積散も当帰四逆加呉茱萸生姜湯も体を温める良方である。今回はこの二方を同時に用いて妊娠に成功した。冷え性の不妊治療においては、その冷えを取り除くことがいかに重要かを示す症例である。
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