二年半前に8週目で流産し、それ以来妊娠しない。
【症例33】 31歳、 女性
身長160cm、体重52kg
症例キーワード: 不妊
主訴
二年半前に8週目で流産し、それ以来妊娠しない。病院で当帰芍薬散と温経湯とを各半年ずつ服用したが妊娠にいたらず。基礎体温表は二層に分離するが排卵後、高温期への移行に3~4日かかり、高温期が短い。子宮筋腫(-)、子宮内膜症(-)。現在、病院での治療は受けていない。
全身症状
寒熱 | 四肢冷(+) |
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二便 | 大便3日1行で便秘傾向。 小便1日6~7行、夜間0行、色・量ともに平 |
飲食 | 食欲(少ない)、飲水(平) |
全身 | 疲れやすく、朝の早起きができない |
胸腹 | 食後に胃痛あり |
浮腫 | 下肢(+) |
睡眠 | 良好 |
汗 | 平 |
月経 | 周期(32日)、経期(7日間)、経痛(下腹、一日目、鎮痛剤(-))、経血(暗赤色、量少)、血塊(5mm×3~4個) |
面 | 色白 |
舌 | 舌質:淡・胖大、舌苔:微白 |
嗜好 | 飲酒(たまに) |
皮膚 | 皮下出血(+) |
体型 | ぽっちゃり型 |
血圧 | 88-60 |
脈拍 | 75/分 |
経過・結果
第1、2診流産後の不妊は芎帰調血飲第一加減を基本に用いる。産後のファーストチョイスとして用いられる芎帰調血飲第一加減であるが、流産後の不妊はその変則パターンと考える。実際に月経の状態などから「血瘀」がうかがえる。更に、全身症状から「気虚」と「虚寒」が考えられる。よって、「血瘀」には芎帰調血飲第一加減、「気虚」には補中益気湯、「虚寒」には五積散、便秘があるので少量の「大黄」を併用することとする。 処方1)芎帰調血飲第一加減25.0/47.0g+補中益気湯10.0/27.0g+五積散12.0/34.0g+大黄0.5g(煎じ薬)14日分×2回 芎帰調血飲第一加減 補中益気湯 五積散 |
第3,4,5診処方1)服用1ヶ月ほどで、食欲(↑)、体力(↑)、下肢冷(↓)、排卵後すぐに高温層へ移行する、大便良好など改善点が見られる。ただし、服用後胃の痛みを生じる。そこで香附子、人参を増量する。 処方2) 処方1)加香附子2.0g人参2.0g(煎じ薬) |
第6診この後、処方2)にて服用後の胃の痛み消失。このまま服用を続け、都合二ヵ月半の服薬にて妊娠成功。 |
考察
いわゆる黄体機能不全と思われる。一般に黄体機能不全に温経湯、エストロゲンの代用に当帰芍薬散が用いられているようである。この症例の場合、流産を経ているので、その際に生じた血瘀をいったん取り除かなくてはならない。よって温経湯や当帰芍薬散では効果は上がらなくて当然である。
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