不妊 4回目の体外受精
【症例130】 37歳、 女性
身長160cm、体重55㎏
症例キーワード: 不妊
主訴
不妊。
過去3回体外受精をしたがいずれも失敗。
器質的病変はない。ただAMHが実年齢よりもすこし低く、プロラクチンも少し高い。
基礎体温表は二相に分離し、高温相は36.7以上×11日間あり。
病院からのカバサール、クロミット、デュファストンを服用中。
全身症状
寒熱 | 冷え性、特に足が冷える。 |
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二便 | 大便2日1行 小便1日7~8行。 |
飲食 | 平 |
全身 | 元気のある方 |
胸腹 | 良好 |
浮腫 | なし |
睡眠 | 良好 |
心神 | 良好 |
汗 | 平 |
頭 | 頭痛(陰天時) |
月経 | 周期(30日)、経期(4~5日)、月経痛(1日目、下腹部)、経血(色:平、量:平)、血塊(50mm×1~2個)、初潮が15歳 |
舌 | 舌質淡、舌苔微白、舌尖に瘀点多数 |
皮膚 | アザが出来やすい |
血圧 | 100~60 |
経過・結果
【第1診】
「初潮が15歳」が決定的である。37歳、AMH(L)も参考になる。典型的な「腎虚不妊」である。また、血塊、アザができやすい、舌尖瘀点などから血瘀も見てとれる。腎虚には亀鹿二仙膠、血瘀には芎帰調血飲第一加減を用いて様子を見ることにする。
処方1)亀鹿二仙膠(エキス散)4.0/4.0g+芎帰調血飲第一加減(エキス散)4.0/7.5g 分2 ×14日分
【第2診】
よくわからないがいい感じ。
4回目の体外受精を行う。
【第3診】
体外受精成功、妊娠せり。
安胎薬に変更
処方2)亀鹿二仙膠(エキス散)3.0/4.0g+当帰芍薬散(エキス散)6.0/12.0g+香蘇散(原末)1.0/6.0g 分2 ×14日分
【第4診】
つわり(−)、腹張(−)、妊娠してから便秘になった(3日/回)
処方3)亀鹿二仙膠(エキス散)3.0/4.0g+当帰芍薬散(原末)3.0/6.0g+香蘇散(原末)1.0/6.0g 分2 ×14日分
【第5診~】
病院の検査良好。便通も回復し毎日あり。
処方3) do. ×14日分~
考察
服薬4週間ほどで妊娠成功。それまで人工授精が3回失敗し、漢方薬を服用開始してから最初(4回目)の人工授精で成功した。漢方の効果は十分評価してよいと思う。
腎虚不妊は先天的に生殖能力が弱い体質をいい、女性では「初潮が遅い」という特徴がある。腎虚不妊には動物由来の生薬を用いた漢方処方を好んで用いている。本案で用いた亀鹿二仙膠は「亀の甲羅」「鹿の角」といった動物生薬が配合されている。
また、初潮の遅さにかかわらず、35歳以上の不妊は「卵子の老化」が背景にある可能性が高いと考えられる。この場合も「腎虚不妊」と考え、亀鹿二仙膠のような動物生薬配合の漢方薬が成績が良い。